最後の晩餐 (クラナッハ)

ルーカス・クラナッハ親子の「最後の晩餐」

16世紀のドイツで活躍した画家、ルーカス・クラナッハ（父）とその息子ルーカス・クラナッハ（子）は、宗教改革の時代を背景に、数多くの祭壇画を制作しました。中でも「最後の晩餐」をテーマにした作品は、父子共作やそれぞれ単独で手がけたものを含め、複数存在します。

宗教改革と「最後の晩餐」

マルティン・ルターによる宗教画への批判が薄れるにつれて、クラナッハ親子は工房で「最後の晩餐」を始めとする様々な主題の祭壇画を制作しました。これらの作品の特徴は、キリストには伝統的な光輪が描かれる一方で、使徒たちが当時の宗教改革の指導者たちの姿で描かれている点です。しかし、このような作風は一時的なもので、プロテスタント絵画はその後、伝統的な表現に戻っていきました。

ヴィッテンベルクの「最後の晩餐」

マルティン・ルターが拠点を置いていたヴィッテンベルクの主教会には、クラナッハ親子の手による「最後の晩餐」の祭壇画が設置されています。中央のパネルには、伝統的な形式で「最後の晩餐」が描かれています。しかし、画面右下でワインを受け取ろうとしている使徒は、ルターの肖像であり、ワインを注いでいる人物はクラナッハ父子どちらかの姿であるとされています。この祭壇画が設置された1547年当時、ルターはすでに亡くなっていました。

別のパネルには、福音主義神学者フィリップ・メランヒトンや、教会の主任牧師ヨハネス・ブーゲンハーゲンが描かれています。また、他の人物たちも町の有力者たちを模して描かれたと推測されていますが、現在では誰であるか特定するのは困難です。

デッサウの「最後の晩餐」

デッサウの聖ヨハンニス教会にある「改革者たちの祭壇画」と呼ばれる1565年の「最後の晩餐」は、ルーカス・クラナッハ（子）の手によるものです。この作品では、イスカリオテのユダを除く使徒たちが、プロテスタントの聖職者や貴族たちの姿を写して描かれています。さらに、ルーカス・クラナッハ（子）自身も給仕役として、画面右下に描き込まれています。

画面左下には、跪いて祈るザクセン選帝侯アウグストの姿が描かれています。この作品は、宗教改革の精神を色濃く反映した、歴史的にも貴重な作品です。

クラナッハ親子の「最後の晩餐」は、単なる宗教画にとどまらず、当時の社会情勢や宗教改革の動きを反映した、歴史的資料としても重要な作品群です。

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