最新科学小説全集

最新科学小説全集の概要

「最新科学小説全集」は、1956年から1957年にかけて元々社によって発行されたSF小説の叢書です。シリーズは全24巻が計画されていましたが、出版社の経営不振に伴い、最終的には18冊で終了しました。また、計画にあった6冊は、東京元々社から宇宙科学小説シリーズとして刊行されることになりましたが、こちらも2冊のみの発行で終わりました。

出版社の成り立ち

この出版社、元々社は明治大学卒業生である小石堅司によって設立されました。その顧問としては、同じく明治大学から派生した教授の斎藤晌が関与していました。新しい大衆文学の一環としてのSFを重視しており、彼自身が叢書の内容を精選したのが特徴です。第1期となる全12巻は1956年の4月から10月にかけて2ヶ月ごとに発刊され、その後の第2期も同じく12巻が予定されましたが、実際には6冊までの刊行にとどまりました。

経営の困難

元々社の倒産に伴い、続編のひとつ「宇宙科学小説シリーズ」は東京ライフ社が発行することとなりましたが、こちらもあまり成果を上げることはできず、結局2冊で打ち切りとなりました。逆境の中で、SFというジャンルへの期待が高まったため、その重要性がますます強調された結果となります。

評価と翻訳の問題

シリーズに対する評価は分かれています。初代『S-Fマガジン』編集長の福島正実は、SF作品の紹介が無策であり、翻訳が極めて不完全であったことを原因として挙げました。同様に、横田順彌も多くの誤訳や不正確な表現が目立ち、翻訳の質の悪さが全体の印象を損ねたと述べています。北杜夫もその翻訳の稚拙さを批判し、後にアメリカでオリジナル作品に触れるまで、翻訳のひどさに驚いたと語っています。

一方で、高橋良平というSF評論家は翻訳や編集に悪質なものもあったが、全てが悪訳ではないとも述べています。ヒーローたるべき福島氏の見解には戦略が感じられるとしながら、一部には良質な翻訳も存在した可能性を指摘しました。また、著名な漫画家である石ノ森章太郎は、翻訳の質はさておき、仲間たちと共にその作品を熱心に読み漁っていたことを明かしています。

問題点

小林信彦は、シリーズがゾッキ本としてまとめ売りされたことも信用を落とした要因の一つではないかと指摘しています。このように、出版業界内外からの評価は様々であり、SFというジャンルの受容の仕方にも影響を及ぼしていることが見受けられます。

刊行リスト

第1期

1. 宇宙航路（ロン・ハバード）
2. 人形つかい（ハインライン）
3. 発狂した宇宙（ブラウン）
4. 海底の怪（ウィンダム）
5. 地球脱出記（ロージャー・ディー）
6. 人工衛星物語（ダンカン）
7. 華氏四五一度（レイ・ブラドベリー）
8. 憑かれた人（アラン・エー・ナース）
9. 人間の手がまだ触れない（シェクレイ）
10. 火星人記録（レイ・ブラドベリー）
11. 月世界植民地（アーサー・クラーク）
12. 新しい人類スラン（ヴァン・ヴォーグト）

第2期

1. 未来世界から来た男（タッカー）
2. 脳波（アンダースン）
3. 百五十年後の革命（ハインライン）
4. 地球の緑の丘（ハインライン）
5. 沈黙せる遊星（シー・エス・ルイス）
6. 文明の仮面をはぐ（ブラッケット）

このように、元々社の「最新科学小説全集」は日本におけるSF作品の重要な土台として評価されており、その歴史や背景についての理解は、現代のSF文化にも強く影響を与え続けています。

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