最果てのイマ

『最果てのイマ』：哲学と謎が織りなす、異色のアドベンチャーゲーム

2005年8月12日、アダルトゲームメーカー・ザウス（純米）より発売された18禁アドベンチャーゲーム『最果てのイマ』。一般的な選択肢による分岐ではなく、独自の「ブログシステム」を採用した、他に類を見ないゲーム性で多くのプレイヤーを魅了しました。

哲学的な深みと、独特のゲームシステム

シナリオライター田中ロミオ氏によるシナリオは、哲学的なテーマを深く掘り下げつつ、独特のユーモアも散りばめられています。選択肢による分岐ではなく、本文中に埋め込まれたハイパーリンクからアクセスできる「ブログ」を閲覧することで物語が展開。ブログにはショートシナリオ、用語説明、そして一瞬のイメージなどが含まれており、プレイヤーはブログを巡りながら、少しずつ物語の全貌を解き明かしていくことになります。一つのブログからさらに別のブログへとリンクが繋がっているなど、その複雑な構造も本作の魅力の一つです。ブログを読み終えると、元の文章へと戻り、物語の進行はプレイヤーの選択によって柔軟に変化していきます。

はかなげな秋と「人類の黄昏」

田中氏への制作依頼は「作品性のあるゲームを作ってほしい」という漠然としたものでした。田中氏は、PCゲームの題材として比較的少ない秋を選び、「はかなさの象徴としての夕方」を描くことで、作品に深みを与えようと試みました。この、過ぎ去りやすい夕暮れのイメージから、「人類の黄昏」という、作品世界を彩る重要なモチーフが生まれました。

音声のないゲームから、フルボイス版、そしてPSP版へ

当初はBGMのみの音声仕様でしたが、2007年11月30日にはフルボイス版が発売。主人公を除くキャラクターにフルボイスが実装された他、サブキャラクターのHシーン追加、Windows Vista 32bitへの対応など、多くの改良が加えられました。さらに、2012年7月26日にはサイバーフロントよりPlayStation Portable版『最果てのイマ PORTABLE』が、2015年7月31日にはXuseよりフルボイス版にPSP版の新イベントを追加した完全版『最果てのイマ COMPLETE』がそれぞれ発売されるなど、長きにわたって愛され続ける作品となりました。

物語のあらすじ：「聖域編」と「戦争編」

物語は大きく分けて「聖域編」と「戦争編」の2部構成になっています。

聖域編

主人公・貴宮忍は、幼少期を施設で過ごし、現在は義姉・千鳥と共に生活しています。友人のいなかった忍は、同様に友人のいない、心に傷を抱えた7人の仲間を集め、「聖域」と呼ばれる町はずれの工場跡で日々を過ごします。彼らは、いじめや旧家の因習といった困難を乗り越えてきましたが、過去の影は依然として彼らを脅かし続けます。忍は仲間たちを守ろうと奔走し、様々な困難に立ち向かっていきます。

戦争編

人間の精神を蝕み、心のない怪物に変えてしまう謎の「敵」の到来が迫る中、忍は施設に戻り、「王」として、模倣子（ミーム）によって結ばれた精神ネットワークを統括する存在となります。しかし、滅亡の危機に瀕しても、人類は一枚岩となるわけではなく、忍の懐柔や排除を企む勢力が暗躍します。邪魔者を排除し、「敵」との戦いに備える忍ですが、そのためには人々をネットワークの端末に変える必要があり、葛藤を抱えながら最後の決戦に臨みます。

多彩なキャラクターたち

個性豊かなキャラクターたちが物語を彩ります。主人公・貴宮忍をはじめ、紅緒あずさ、本堂沙也加、塚本葉子、伊月笛子、樋口章二、塚本斎といった「聖域」のメンバー、そして、忍の義姉である貴宮千鳥や、謎の少女・イマなど、多くのキャラクターが複雑に絡み合い、物語に奥行きを与えています。

謎めいた世界観と用語

本作は、未来の21世紀半ばを舞台としており、模倣子（ミーム）、群像委員会、「施設」、イマジナリーネットといった、独特の世界観と用語が物語に深みを与えています。これらの要素は、物語の理解に不可欠であり、深く読み解くことで、より一層作品の世界観を楽しむことができます。

未解明の謎と、続く余韻

ストーリーの中には、未だ解明されていない謎も多く残されており、プレイヤーはゲームクリア後も、その解釈について考えさせられることでしょう。独特のゲームシステム、哲学的なテーマ、そして謎多きストーリー。多くの謎と、考えさせられる余韻を残す『最果てのイマ』は、今もなお多くのプレイヤーを魅了し続けています。

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