最終電車 (ゲーム)

最終電車

『最終電車』は、ヴィジットより1998年2月26日にPlayStation用ソフトとして発売されたサウンドノベルです。原作は大迫純一氏が手掛けており、日常の中に潜む異様な出来事や恐怖をテーマにした物語が展開されます。後に2002年4月25日には、PlayStation 2向けにも移植版がリリースされました。

本作は、ヴィジットが発売したサウンドノベル作品の第2弾にあたります。この作品以降、同社のノベルゲームには「ハイパーノベル」という独自のジャンル名が付与されるようになりました。

ゲームシステムは、一般的なサウンドノベルのスタイルを踏襲しています。背景グラフィックが表示された画面に文章が重ねて表示され、物語の途中に現れる選択肢を選ぶことでストーリーが分岐していきます。グラフィックは前作『あかずの間』（1997年）に引き続き、全てCGで描かれており、独特の雰囲気を作り出しています。前作では背景のみでしたが、本作では登場人物がシルエットで表現されており、これは先に発売された『かまいたちの夜』（1994年）と同様の形式です。

PlayStationのハード特性を活かし、3Dムービーが随所に挿入されるほか、立体音響システムによるサウンド演出が採用されており、臨場感を高めています。特に、物語の核心に迫る場面では突発的なイベントとしてCGムービーが挿入され、プレイヤーを引き込みます。

シナリオは選択肢によって多岐にわたって分岐します。メインとなるホラーストーリーだけでなく、選択によってはラブロマンスやコメディタッチの展開が用意されているなど、多様なルートが存在します。これらのシナリオルートを示すフローチャートは、まるで電車の路線図のようなユニークなデザインとなっており、ゲームの進行に合わせて表示される路線が増えていく仕組みです。プレイヤーが現在どのシナリオを進んでいるかは、セーブ・ロード画面で確認できます。

物語の始まりは、遅い残業を終えていつもの最終電車に乗る主人公。しかし、その日の電車はいつもと様子が違いました。普段は各駅停車のはずなのに、目的の駅で停車しません。何が起こっているのか、なぜ電車は止まらないのか。主人公はその謎を探るべく、最後尾から先頭車両へと移動を始めます。その先で彼が見たものとは――。

本作には、主人公を取り巻く個性的な登場人物が登場します。

石岡 哲也: 本作の主人公（名前変更可能）。プレイヤーは彼の視点を通して異変に対処します。終電で見かける女性、美由紀のことが気になっています。デザイナーとして働いており、特撮番組に関わるルートも存在します。
畠山 美由紀: 中学校の歴史教師。コンビニでのアルバイトのため帰りが遅くなっています。後作『19時03分 上野発夜光列車』にも登場します。
白石 智道: 中学受験を目指す小学生ながら、大人顔負けの知識と判断力を持つオカルトマニア。完結編にも登場します。
河野 薫: いわゆる「黒コギャル」の外見を持つ女子高校生。褐色に焼けた肌やルーズソックスなど、当時の流行を取り入れた姿ですが、お婆ちゃん子という一面も持ち合わせています。
御堂 達彦: 列車内で出会う男性で、自己紹介では「公務員」と名乗ります。長身でがっしりした体格。その正体は鉄道警察隊の刑事であり、事件発生時には捜査にあたることもあります。
中村 政幸: 日々の仕事の不満を酒で紛らわせるサラリーマン。
中村 千佳: 完結編で視点主となる女子高校生。ツインテールの髪型とみられます。
サラリーマン風の男性: リメイク版の追加シナリオ「時空の章」に登場。本名不明。酒に酔った中村と共に主人公たちと合流します。

2002年に発売されたPlayStation 2移植版では、いくつかの変更点があります。音響面では5.1chドルビーデジタルに対応し、より迫力あるサウンドが実現されました。オープニングムービーが一部変更されたほか、登場人物のシルエットカラーがオリジナル版の青から白に変更されています。また、追加シナリオ「冥界封印編 時空の章」が収録されており、これは原作の大迫氏ではなく福田桐枝氏が脚本を担当しています。

ゲーム誌『ファミ通』のクロスレビューでは、PlayStation版が40点満点中26点、PlayStation 2版が25点と評価されています。

『最終電車』は、日常の光景が一変する恐怖を描きつつ、複数のシナリオで多様な人間ドラマやユーモアをも内包した、ユニークなサウンドノベル作品と言えるでしょう。

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