月は地獄だ!

月は地獄だ!

ジョン・W・キャンベルJr.によるSF小説『月は地獄だ!』（The Moon Is Hell!）は、月面探査という夢と希望に満ちた舞台設定から一転、極限状態における人間のサバイバルを描いた作品です。本作は、月面着陸後の事故により地球との通信手段を失い、帰還の望みを絶たれた男たちの姿を、一隊員の視点から日記形式で綴っています。

あらすじ

「ガーナー月探検隊」の15名は、月の裏側への着陸に成功します。科学者や技術者からなる彼らは、24ヶ月に及ぶ探査計画を立て、宇宙船を分解して基地を建設、エネルギー源となる光電池を設置します。探査は月の夜間に行われ、22ヶ月目には最初の犠牲者が出ます。2人の隊員が「モルコット裂孔」で事故死してしまうのです。

帰還予定の23ヶ月目、ロケットエンジンの異常燃焼により宇宙船が墜落、爆発し、彼らは帰還手段と補給物資を同時に失います。地球への救助要請も不可能となり、男たちは月面で生き残るための過酷な戦いを強いられます。

物語は大きく二つのパートに分かれています。

第一部「空気への戦い」: 月面に存在する物質から酸素を生成するまでの苦闘が描かれます。限られた資源と時間の中、彼らは科学知識と創意工夫を駆使し、呼吸に必要な酸素を確保しようとします。
第二部「食料への戦い」: 保存食糧が底をつきかける中、月面で入手可能な物質から人工食料を合成するプロセスが描かれます。未知の物質から安全な食料を作り出すことは、想像を絶する困難を伴います。

書誌情報

『月は地獄だ!』（矢野徹訳、ハヤカワ文庫SF SF226） 1977年2月15日発行
『月は地獄だ!』（矢野徹訳、岩崎書店、少年少女SFアポロシリーズ） 1969年

関連作品

『月は地獄』桑田次郎: 本作をベースとした漫画作品。週刊少年マガジン 1969年8月10日号および8月17日号に掲載。
超獣機神ダンクーガ: 1985年放送のTVアニメ作品。第33話のサブタイトル『月は地獄だ!!（Moon is hell）』は、本作へのオマージュ。
『火星の人』: アンディ・ウィアーのSF小説。宇宙に取り残された主人公が科学知識を駆使して生き延びる物語。
オデッセイ (映画): 『火星の人』の映画化作品


『月は地獄だ!』は、単なるSF冒険小説としてだけでなく、極限状態における人間の知恵、勇気、そして団結力を描いた作品として、多くの読者に感動と希望を与え続けています。困難な状況に直面した時、人間は何を考え、どう行動するのか？ 本作は、その問いに対する一つの答えを示唆しているのかもしれません。

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