月の裏

月の裏側（つきのうら）

月の裏側とは、月が地球に面していない半球を指します。この部分は、地球からは直接観測することができず、宇宙探査によってのみその姿を知ることが可能です。

月の裏側の観測

月はその自転と公転が同期しているため、常に同じ面を地球へ向けています。このため、月の裏側はほとんど見ることができませんが、いくつかの要因によってわずかに可視部分が存在します。月の公転軌道は円ではなく、わずかに楕円形であるため、近地点での公転は速く、遠地点では遅くなります。この速度の違いにより、月の自転も微妙に遅れたり進んだりします。また、月の自転軸は公転軸と約6.7°ずれているため、地球側に向いている面の一部がさらに広く見えます。地心視差も影響し、観測者の位置によって見える部分が変わります。

これらの要因によって、実際には地球から約59%の月面が見えることができますが、裏側は180°の位置にあり、常に観測可能というわけではありません。一部の部分は秤動と呼ばれる現象によって見えるものの、良好な条件で観測するのは難しいのです。日本の月探査機や各国の宇宙機関による多様な探査ミッションによって、月の裏側は少しずつその全貌が明らかにされてきました。

月の裏側の探査の歴史

月の裏側への探査は、1959年にソビエト連邦のルナ3号が初めて行った撮影に遡ります。この探査によって、これまで謎に包まれていた部分の地形が映し出されました。1962年にはアメリカ合衆国のレインジャー4号が裏側に衝突しましたが、故障のため観測は行えませんでした。その後、ソ連のゾンド3号は1965年に裏側を高解像度で撮影し、1966年から1967年にかけてアメリカのルナ・オービター計画がほぼ全域をカバーしました。1968年にはアポロ8号が月周回軌道に入り、初めて人間が目にした裏側の風景が広がりました。

さらに、1994年にはアメリカの探査機クレメンタインが高解像度のデジタル地形データを収集し、2007年から2009年にかけては日本の月周回衛星かぐやが重力分布や低高度の観測を行いました。2019年に中国の嫦娥4号が史上初の裏側への軟着陸に成功し、2024年には試料採取が行われるなど、探査の進展を見せています。

月の裏側の特徴

月の裏側は、表側に比べて地形や成分が異なります。表側には多くの大きな海が存在しますが、裏側はほとんど海がなく、2%程度しかありません。この理由は明確には解明されていませんが、地殻の厚さも裏側では表側よりも大きいという特徴があります。

月の裏側の高低差は表側よりも大きく、月の最高点は裏側に位置し、南極エイトケン盆地は最低点として知られています。地殻の厚さは裏側で68km、表側で60kmとされ、構造的にも興味深い部分となっています。

結論

月の裏側は地球からの監視が難しいにもかかわらず、各国の探査活動によってその詳細が徐々に明らかになっています。この未踏の領域は科学者たちにとって多くの謎と興味をもたらし、今後の探査にも期待が寄せられています。

もう一度検索