ジョン・W・キャンベル

ジョン・ウッド・キャンベル・ジュニア：SF黄金時代を築いた編集者、作家

ジョン・ウッド・キャンベル・ジュニア（1910年6月8日 - 1971年7月11日）は、アメリカのSF作家、編集者であり、SF雑誌『アスタウンディング・サイエンスフィクション』（後の『アナログ』誌）の編集長として、SFの黄金時代を築いた人物として知られています。アイザック・アシモフは彼を「SF界で最も強力な力を振るった人物」と評しました。

生涯

1910年、ニュージャージー州ニューアークで生まれたキャンベルは、マサチューセッツ工科大学 (MIT) に入学し、ノーバート・ウィーナーと親交を深めます。18歳でSF作家としてデビューし、21歳でパルプ・マガジン作家として名を馳せますが、ドイツ語の試験に落ちMITを中退。その後、デューク大学で物理学の学位を取得しました。

1937年、『アスタウンディング』誌の編集長に就任。アシモフ、ハインライン、ヴァン・ヴォークトといった才能ある作家を次々と発掘し、SF黄金時代を牽引しました。1939年にはファンタジー専門誌『アンノウン』を創刊するなど、その活動は多岐に渡りました。

作家としての経歴

キャンベルは、本名でスペースオペラを、ドン・A・スチュアート名義でより文学的な作品を発表しました。初期には『アーコット、モーリー&ウェード』シリーズなどの宇宙冒険ものを執筆。スチュアート名義では、「薄暮」「夜」「影が行く」といった傑作を残しています。特に「影が行く」は、後に『遊星よりの物体X』として映画化され、多くの人々に影響を与えました。

SF作家としての代表作には、月面探検隊のサバイバルを描いた『月は地獄だ!』があります。

編集者としての影響

キャンベルは、『アスタウンディング』誌の編集長として、SFの質を高めることに尽力しました。彼は、作家にアイデアを提供し、表紙のイラストに合わせたストーリーを依頼するなど、ユニークな編集手法を用いました。アシモフの出世作「夜来たる」や「ロボット工学三原則」は、彼のアイデアから生まれたものです。

しかし、その影響は良い面ばかりではありませんでした。アシモフは、『ファウンデーション』シリーズに異星人が登場しない理由として、キャンベルの思想を避けたためだと語っています。

思想と晩年

キャンベルは、各号に独断的な社説を掲載し、疑似科学的な理論や、時には極右的な政治観を表明しました。そのため、晩年は多くの作家が彼から離れていきました。アーサー・C・クラークは、キャンベルを「晩年に近づくにつれて、ありとあらゆる論争を呼ぶアイデアに関与し、かつての示唆に富む編集後記は意味不明に近くなった」と評しています。

1971年、ニュージャージー州で61歳で亡くなりました。

人柄と評価

キャンベルは、その個性的な人柄でも知られています。デーモン・ナイトは彼を「太っていて、ブロンドの髪を逆立たせ、挑発的な睨み方をする人物」と表現し、アシモフは「話好き、独断的、移り気で高圧的」と評しました。キングズリー・エイミスは「際立った残忍さを持った人物」と述べています。

遺産

キャンベルの死後、彼の功績を記念して、ジョン・W・キャンベル記念賞とジョン・W・キャンベル新人賞が設立されました。しかし、新人賞は後に「アスタウンディング新人賞」に改名されています。

ジョン・W・キャンベル・ジュニアは、SFの歴史において、最も重要な人物の一人として記憶されています。

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