月光嗜好症

ALI PROJECTの『月光嗜好症』は、宝野アリカと片倉三起也による音楽ユニットが放つ、初のストリングスアルバムです。このアルバム最大の特徴は、収録されたすべての楽曲が弦楽器のみで演奏されている点にあります。過去に発表された楽曲も、今作のためにストリングスアレンジが施され、原曲とは異なる新たな魅力を引き出しています。

アルバムタイトルは、稲垣足穂の著作『天体嗜好症』からの影響が感じられます。収録曲にも「月光ソワレ」や「月のなかの少女」など、月をテーマにした楽曲が多く、ALI PROJECTならではの耽美的で幻想的な世界観をより一層深めています。

特筆すべきは、過去の楽曲に施されたストリングスアレンジです。「紅い睡蓮の午後」「ナルシス・ノワール」「桜の花は狂い咲き」「コッペリアの柩」「星月夜」「共月亭で逢いましょう」といった楽曲が、弦楽器ならではの繊細な響きと重厚なアンサンブルによって、新たな表情を見せています。特に「コッペリアの柩」は、様々なバージョンが存在する楽曲ですが、本アルバムではストリングスアレンジによって、よりドラマティックで情感豊かな仕上がりとなっています。

インストゥルメンタル曲である「月光ソワレ」は、ALI PROJECTが2002年から開催しているストリングスコンサートのタイトルにもなっており、彼らのストリングスサウンドへのこだわりが感じられます。また、「月のなかの少女」は、片倉三起也のソロアルバム「Lento」にも収録されていますが、本アルバムでは若干異なるアレンジが施されています。

アルバムには、豪華なミュージシャンが参加しています。編曲は、斉藤聡、平野義久、渡辺剛、山田武彦が担当し、それぞれの個性的なアレンジが楽曲に深みを与えています。ヴァイオリンは、渡辺剛、杉野裕、小泉弘和、今野均、門脇大輔、秋吉由紀、Rinko Kishi、塚本弥生、徳永友美、佐々木清香が担当。ヴィオラは、志賀恵子、両角里香、安保惠麻が担当。V.Celloは、四家卯大、前田善彦、阿部雅士が担当。ベースは、田辺和弘、北村一平が担当しています。彼らの卓越した演奏技術が、アルバム全体のクオリティを高めています。

『月光嗜好症』は、ALI PROJECTの音楽性を新たな角度から捉えた意欲作であり、ストリングスアレンジによって楽曲の新たな魅力を発見できる、ファン必聴のアルバムと言えるでしょう。耽美で幻想的な世界観を、より深く堪能できる作品です。

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