月照寺 (明石市)

月照寺：明石城と歩んだ歴史と文化

兵庫県明石市人丸町に位置する月照寺は、曹洞宗に属する由緒ある寺院です。人丸山を背に、歴史と文化が息づくこの地で、月照寺は1200年以上の時を刻んできました。本尊は十一面観音、山号は人丸山です。

空海と覚証：創建から真言宗時代へ

月照寺の起源は、811年（弘仁2年）に空海が明石城址付近に創建した湖南山餘鵜楊柳寺に遡ると伝えられています。その後、887年（仁和3年）には覚証が人丸社（現在の柿本神社）を建立し、寺号を月照寺と改称しました。この時代、月照寺は真言宗寺院として信仰を集めていました。境内には、柿本神社が鎮座し、神仏習合の信仰が息づいていました。神仏一体の思想に基づき、神社の運営には神官と僧侶が共同で携わっていたと考えられます。

曹洞宗への転換と明石城築城

1575年（天正3年）、曹洞宗の僧・安室が入寺し、月照寺は曹洞宗へと宗派を変えました。江戸時代初期、明石城の築城に伴い、1619年（元和5年）には現在の地へと移転しました。この移転は、明石城が西国の大名への抑えとして、本格的な城郭として整備されるという幕府の方針に基づくものでした。明石城の築城は、関ヶ原の戦いの後、徳川家康による大名配置転換の一環として、小笠原忠真が信濃国松本から播磨国明石に移封されたことに伴うものでした。忠真は当初、舟上城を居城としましたが、幕府の命により、西国街道と明石海峡を見渡せる人丸山に新たな城を築くこととなり、月照寺も現在地へと移転を余儀なくされたのです。この移転に際しては、藩主小笠原忠真の意向を伝える執達状が月照寺に送られ、現在明石市立文化博物館に展示されています。

明治維新と神仏分離

明治維新後、明治政府は神仏分離令を発布しました。これにより、それまで一体であった月照寺と柿本神社は、別の宗教法人となりました。歴史の大きな転換点であり、神仏習合から神道と仏教が分離されたことを象徴する出来事でした。

月照寺の文化財

月照寺は、数多くの貴重な文化財を所蔵しています。

重要文化財: 桜町天皇宸翰及び一座短籍（50葉）1帖（1901年指定）
明石市指定文化財:
月照寺山門（旧伏見城薬医門、1610年明石城に移築、1873年現地に再移築、1970年指定）
三十六歌仙絵及び和歌式紙（1970年指定）
* 柿本人麻呂神位・神号に関する文芸資料等及明石藩関連資料（2010年指定）

これらの文化財は、月照寺の歴史と文化遺産を語る上で重要な役割を果たしています。

月照寺周辺

月照寺周辺には、柿本神社、明石市立天文科学館、明石藩主の菩提寺である松寿院など、歴史的・文化的施設が点在しています。これらの施設を巡ることで、明石の歴史と文化をより深く理解することができます。月照寺は、明石の歴史と文化を語る上で欠かせない存在であり、これからも人々の心に深く刻まれ続けることでしょう。

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