月照寺 (松江市)

月照寺 - 島根県松江市の名刹

月照寺（げっしょうじ）は、島根県松江市外中原町に位置する浄土宗の寺院で、出雲国神仏霊場第5番札所でもあります。この寺院は特に松平家の墓所が国の史跡に指定されていることから、多くの観光客や歴史愛好者に訪れられています。境内には松江市立第一中学校と隣接しているため、地域に根ざした寺院でもあります。

沿革と歴史

この地域にかつて存在した禅寺、洞雲寺が月照寺の前身です。長い間荒廃していたその寺院を、松江藩初代藩主・松平直政が母の月照院の霊牌を安置するために1664年に再建しました。浄土宗の長誉が開基となり、「蒙光山月照寺」と改名されました。直政は1666年に江戸で亡くなる際、百年後に自らの墓をこの地に築くよう遺言したと言われています。これを継承した2代藩主・綱隆は、直政の意志を尊重し、境内に彼の廟所を設けました。この際に山号は「歓喜山」と変更され、以降は9代藩主の墓所として利用されました。

特に、茶人として知られる7代藩主・松平治郷（不昧）の廟門は名工・小林如泥の作品であり、その彫刻は見応えがあります。境内には、治郷が愛用した茶室「大円庵」や、治郷のお抱え力士である雷電爲右衞門の碑も設置されています。また、1891年には小泉八雲がこの寺を訪れ、その美しさに感銘を受けたとも伝えられており、彼もこの地に墓所を定めたいと願ったそうです。

月照寺の境内には、初代から9代藩主までの廟が良好な状態で保存されており、1996年には「松江藩主松平家墓所」として国の史跡に指定されました。特に高真院（直政）の廟門や大円庵（治郷の廟門）は、島根県の有形文化財にも指定されています。また、境内には宝物殿があり、多くの歴代藩主の遺品を展示しています。さらに、アジサイが豊富に植えられていることから、花のシーズンには「アジサイ寺」として多くの観光客が訪れます。

大亀伝説

月照寺には興味深い伝説も残されています。代藩主・宗衍の廟所に設置された寿蔵碑の土台となった大亀は、夜な夜な松江の街を徘徊し、水を飲んでは人を襲ったと言われています。この伝説は、小泉八雲の随筆『知られざる日本の面影』でも紹介されており、町中での大亀の姿を想像すると不気味でありながらも興味をそそります。この大亀は、使用された石材の元となる「母岩」や「久多見」と関連しています。不昧は出雲市久多見町の山中から美しい緑色の久多見石を選び、これを使用して大亀を作り上げましたが、運搬には非常に困難を極めたと言われています。そのため、この岩を用いて製作された部分には特別な神聖な力があるとされ、不昧は延命地蔵像を描かせ、美しい岩に刻みました。現在では、この大亀の頭を撫でることで長生きできると信じられています。

文化財と交通アクセス

月照寺は多くの文化財の宝庫でもあります。松江藩主松平家墓所や、高真院・大円庵の廟門はともに島根県指定の有形文化財として認定されています。また、境内には絹本著色騎獅子文殊像などの貴重な仏教美術作品も収蔵されています。

交通アクセスは、松江しんじ湖温泉駅から徒歩20分、またはぐるっと松江レイクラインの月照寺前停留所からもすぐに訪れることができます。歴史的な意義とともに、美しい自然や文化にあふれるこの月照寺は、訪れる価値があるスポットと言えるでしょう。

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