月蒼くして

映画の概要

『月蒼くして』（つきあおくして、The Moon Is Blue）は、1953年にアメリカで制作されたロマンティック・コメディ映画です。この作品は、監督オットー・プレミンジャーが手掛け、ウィリアム・ホールデン、デヴィッド・ニーヴン、マギー・マクナマラが出演しています。映画の原作は劇作家F・ヒュー・ハーバートによる同名の舞台劇であり、プレミンジャー監督はこの舞台の演出も担当していました。

作品の背景

『月蒼くして』は、1950年代のハリウッドにおける自主検閲制度に対する挑戦として注目を浴びました。当時の映画界では、際どい内容を扱った作品は自主的に検閲されることが一般的でした。しかし、プレミンジャーは原作の大胆な台詞をそのまま映画に持ち込むことを決断し、それが一部地域での上映禁止という結果を招くこととなります。これは、逆に映画に対する興味を引き、結果的には大ヒットを記録しました。このことから、本作は映画史において特別な地位を確立しました。

ストーリー

物語はエンパイア・ステート・ビルの展望台から始まります。プレイボーイの建築家ドンと、独特な個性を持つ若手女優パティが出会うシーンから展開します。互いに惹かれ合った二人は、ドンのアパートで夕食を共にすることになります。しかし、そこで予想外の騒動が巻き起こります。ドンの元婚約者シンシアとその父デビッドが突然現れ、さらにはパティの父親まで加わり、状況は複雑さを増します。いつしかこの騒動はコミカルな展開を見せ、観客を楽しませることになります。

キャストと制作

この映画の制作にあたって、監督のオットー・プレミンジャーは、原作舞台劇のブロードウェイ公演（1951年）でも演出を手掛けていました。彼はまた、映画脚本もF・ヒュー・ハーバートに依頼し、原作の世界観を忠実に映画に反映させました。当初は、デヴィッド・ニーヴンの起用にスタジオ側が反対する場面もありましたが、プレミンジャーの努力により、ニーヴンは舞台での実績を示し映画に参加することとなりました。さらに、マギー・マクナマラは本作が映画デビュー作であり、既に舞台劇のシカゴ公演で同じ役を演じていたことから、彼女のパフォーマンスが期待されました。

検閲と影響

この作品は、映画における性に関する言及が多いため、一部の地域で上映禁止となったことが大きなニュースとなりました。ボストンでは特に厳しく禁じられ、アメリカ映画製作配給業者協会は自主規制を求めたものの、映画制作者側はこれに反発を示しました。結局、この作品は映倫マークを付けずに上映されましたが、驚異的な人気を博し、その影響力から、映画の検閲に関するルールが見直されるきっかけともなりました。

受賞と評価

『月蒼くして』は、公開当初から高い評価を受け、特にマギー・マクナマラは、映画での演技により第26回アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされるなど、その功績が認められました。彼女の演技は、観客に深い印象を与え、今もなお語り継がれています。

この映画は、単なるロマンティック・コメディに留まらず、当時の社会的なテーマを反映した重要な作品として、多くの人々に愛されています。

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