月賦百貨店

月賦百貨店の知られざる歴史と特徴

月賦百貨店（げっぷひゃっかてん）は、日本における独特な小売形態で、割賦販売を通じて商品を提供していた店舗のことを指します。一般的な百貨店、例えば三越や伊勢丹とは異なる形態を持ち、特に庶民にとって利用しやすい仕組みを採用していました。

月賦百貨店の起源

月賦百貨店の背景には、割賦販売を行っていた「椀船」があり、これは漆器類の販売がその活動の起点となっています。1921年には、丸共合資商会が最初の店舗を新宿に設け、そこから多くの店舗が全国に広がっていきました。大正から昭和初期の間、月賦百貨店は社会的にも必要とされ、特に戦後の混乱期にはインフレが進行する中で再び復活を遂げました。昭和40年代には、この業態が絶頂を迎え、繁忙を極めました。

特徴と人気の理由

月賦百貨店は、「一度に高額な商品を購入するのが難しい」という消費者のニーズに応える形で展開されました。店舗では担保設定なしに割賦販売が可能で、資金回収も店舗で行うという形をとっていました。最盛期には、丸井、緑屋、丸興、大丸百貨店などの大手が業界を牽引し、庶民に愛される存在となっていたのです。

しかし、経済の成長とともに、消費者の所得が増加し、銀行などの金融機関が信用販売制度を充実させた結果、月賦百貨店の必要性は次第に薄れていきました。これにより、多くの店舗が経営難に直面し、最終的には業態の変化を余儀なくされました。

各社の変遷

例えば、丸井は店舗の業態を一般的な百貨店へと変更し、現金一括払いも扱うようになりました。さらに、「赤いカード」と呼ばれるハウスカードを発行し、ファッションビルとして今でも多くの人に親しまれています。しかし、近年では自社の小売業務を縮小し、ショッピングセンター業態へとシフトしています。

緑屋は西武流通グループ（後のセゾングループ）の傘下に入ると同時に、月賦百貨店事業から撤退し、クレジットカード事業に特化しました。また、丸興もダイエーグループに取り込まれ、買収後は金融業務の強化へと舵を切りました。大丸百貨店は、新たに家電量販業態に転換し、一部店舗は不動産業へも進出しています。興味深いことに、これらの企業は全て、月賦百貨店時代の顧客基盤を活用しながら、各々異なる道を歩むこととなったのです。

歴史的な歩み

月賦百貨店の起源は1921年にさかのぼりますが、その後の歴史においても多くの変革がありました。特に、1946年の戦後復興期には、丸井と岡本商店（後の緑屋）が事業を再開し、1947年には大丸百貨店も復活しました。1950年代には、月賦百貨店についての全国的な組織が結成され、業界全体の活性化を図る動きが見られました。しかし、1960年代には月賦の名称をクレジットに改め、クレジットカードが普及する流れが進む中で月賦百貨店の姿は消えゆく運命にありました。

現在の状況

現在、月賦百貨店という業態そのものはほとんど見かけられず、歴史的な遺産として記憶されることが多くなっています。しかし、井野屋のように、少数の店舗はその業態を維持しながら存在しているものもあります。全体としてみれば、月賦百貨店は日本の小売業の歴史における一つの象徴とも言える存在であったことは間違いありません。

このような変遷を経て、月賦百貨店は消費者信用の発展と共に形を変えながら、その営みを続けてきたことでしょう。

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