月震

月震とは

月震（げっしん）は、月面で発生する地震を指し、英語では「moonquake」と呼ばれています。この用語は、地球における「earthquake」から派生したもので、地球に関連する「earth」という言葉が示すのは「大地」であり、単に「地球」ではありません。

月震の歴史

月震が科学的に認識されたのは1969年、アポロ11号が月に地震計を設置した際です。この時、月にも地殻変動が起きることが認識されました。最初に設置された地震計は太陽電池を動力にしていましたが、保温カバーがないため、運用開始から約1ヶ月で停止しました。

その後、アポロ12号、14号、15号、16号が新たな地震計を設置しました。不具合を解消するため保温カバーが施され、より長期間の観測が可能になりました。アポロ17号には重力測定装置も搭載されています。これらの観測は1977年まで続き、通算8年10ヶ月にわたって12558回の月震が記録され、現在知られている月震に関するデータのすべてを含んでいます。

月震の特徴

限られた観測データから分かる月震の主な特徴は、揺れの持続が長いことです。揺れのピークに達するまでの時間は数十分に及ぶこともありますし、振動が収まるまでには数時間かかることもあります。また、震動波形においては、浅発月震を除いて、実体波や表面波の判別が難しいのが特徴です。

月の地殻は、地球とは異なり明確に層が分かれていないため、地震波が散乱しやすく、減衰も地球に比べて少ないことが観測によって明らかになっています。主に1ヘルツ程度の長周期の波が強く観測され、最大の月震のエネルギーは地球の大規模地震に比べてはるかに小さく、マグニチュード4程度です。

月震の分類

これまでに記録された月震は大きく5つのタイプに分類されていますが、観測された月震の約半数、7633回は詳しく分類されていません。以下に各タイプの概要を示します。

深発月震

深さ800から1100キロメートルで発生する月震で、マグニチュードは1から2と小規模です。このタイプの地震は3145回記録され、特定の震源に由来を持つものが多く、波形の特徴によって109のグループに分けられています。

浅発月震

深さ300キロメートルで発生を推定され、マグニチュード3から4と比較的大きな揺れです。観測数は28回と少なく、詳細は未解明な点が多いです。

隕石衝突

月面に隕石が衝突した際の振動も月震として感知されています。アポロ計画では179回の隕石衝突による振動が観測されており、隕石の質量は500グラムから50キログラムとされています。

熱月震

月面の昼夜の温度差による岩石の膨張や収縮から発生する振動です。多くは地震計の近くで発生し、特定の地震計でしか記録されないため、他の月震とは区別が可能です。

人工月震

アポロ計画では、爆薬やロケットのブースターを月面に衝突させることで人工的に月震を起こす実験が11回行われました。これにより、月の内部構造に関するデータを取得することが期待されました。

さらに、アポロ計画で収集されたデータは月の表側に限られており、十分な情報は得られていません。日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）は、LUNAR-A計画で月の裏側に地震計を搭載したペネトレータを投入することを計画しましたが、2007年に計画が中止され、今後の展開は不透明です。ただし、ペネトレータ自体は今後もさまざまなプロジェクトで使用される可能性があります。

参考文献

• - 小山順二. “月地震学の新たな一歩”. 日本地震学会. ニュースレターvol.14 no.5.
• - 小山順二:新しいアポロ月震カタログから明らかになった深発月震の周期性. 北海道大学地球物理学研究報告.

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