有漢町

旧有漢町：歴史と教育の灯

岡山県の中央部、吉備高原に位置していた旧有漢町（うかんちょう）は、現在は高梁市の一部となっています。この地は、豊かな自然と、先人たちの努力によって築かれた歴史が息づいています。

地理とシンボル

旧有漢町は、吉備高原の山々に囲まれた自然豊かな場所でした。町の中心にある常山公園には、独特な「石の風ぐるま」が設置されており、町のシンボルとして親しまれてきました。この風ぐるまは、訪れる人々に静かながらも力強い印象を与えます。

歴史：苦難を乗り越え、教育を重視した町

発足と合併

1889年（明治22年）に有漢村と上有漢村が誕生し、1956年（昭和31年）に合併して有漢町となりました。しかし、2004年（平成16年）に高梁市との合併により、その歴史に幕を閉じました。

日露戦争後の危機と復興

日露戦争後、有漢村は大きな危機に見舞われました。有力者であった佐藤家の倒産、そして指導者の相次ぐ死により、村は存続の危機に立たされます。多くの土地が村外の手に渡り、村の財政は困窮しました。

この危機に立ち上がったのが、中山祇重と蛭田伝助でした。彼らは村長と助役として、村の立て直しに尽力します。村外に渡った土地の買い戻し、信用組合の設立、養魚場や醸造所の経営、村民への副業奨励など、様々な事業を展開し、村の財政を立て直しました。また、教育にも力を入れ、村の発展の礎を築きました。

教員養成所の設立と発展

明治時代、教員不足が深刻だった時代に、有漢村は独自の教員養成所を設立しました。農業補習学校を転用し、有漢教員養成所を開校したのです。当初は財政的に厳しい状況でしたが、村民の熱意と努力により、教員養成所は発展を遂げました。

特に金岡助九郎が所長に就任してからは、教育内容が充実し、全国的に知られるようになりました。授業料を無料化し、女子教育にも力を入れ、高い就学率を実現しました。最盛期には、台湾や朝鮮からも生徒を受け入れるなど、国際色豊かな教育機関となりました。25年間で3600人以上の卒業生を輩出し、日本の教育に大きく貢献しました。

現在の有漢町

旧有漢町は、現在高梁市の一部となり、その地名は「高梁市有漢町」として残っています。かつての町役場は、現在は高梁市有漢地域センターとして利用されています。

教育機関

町内には、有漢こども園、有漢東小学校、有漢中学校が設置されています。有漢西小学校は2022年に廃校となりましたが、陰山メソッドを導入したことで知られています。また、2025年4月には、小中一貫校の有漢学園が開校予定です。

交通

岡山自動車道の有漢インターチェンジがあり、国道313号線が町内を通っています。また、県道も整備されており、近隣地域とのアクセスも良好です。

名所・旧跡・観光スポット

常山公園、有漢グランドゴルフ場、農村公園などの観光スポットがあります。また、国指定重要文化財である臍帯寺石幢及び石塔婆保月六面石幢、保月の二重塔、保月の五輪塔群など、歴史的な遺産も数多く残っています。

著名な人物

この地域からは、秋庭三郎重信、綱島梁川、綱島静観、佐藤兵八、森謙治、大本修、伊賀章など、多くの人物が輩出されています。


旧有漢町は、自然と歴史、そして教育を大切にした町でした。その精神は、現在も地域の人々に受け継がれています。

もう一度検索