森謙治

森謙治の人生と業績

森 謙治（もり けんじ、1935年3月21日 - 2019年4月16日）は、日本を代表する化学者であり、東京大学の名誉教授としてその名を知られています。農学博士の資格を持ち、主に有機合成化学と生物活性物質化学を専攻しました。また、日本学士院の会員としてもその研究成果が高く評価されていました。彼の故郷は朝鮮・京城府で、幼少期は岡山県の上房郡有漢村で過ごしました。

学歴と職歴

森は1947年に有漢国民学校（現・高梁市立有漢西小学校）を卒業し、その後高梁市立有漢中学校を経て、1953年に東京都立新宿高等学校を卒業しました。1957年には東京大学農学部農芸化学科を卒業し、1962年には同大学院農学系研究科の博士課程を修了しました。その後、東京大学の農学部において助手、助教授、教授として400を超える論文を執筆し、特に1978年から1995年まで続いた教授職を通じて多くの学生を育成しました。1995年からは東京理科大学の理学部で教授として教鞭を執り、2015年12月には日本学士院会員に選ばれました。

研究業績

森謙治の名を世界に広めたのは、ジベレリンの化学合成に成功したことです。これは、植物ホルモンの一種であり、成長や発芽に重要な役割を果たします。この技術の開発により、他の生物活性物質、特に昆虫のフェロモンなどの合成にも貢献しました。彼はこれらの物質の立体構造とその生理活性の関連についての研究を進め、化学分野での知見を深めました。

公的活動と社会貢献

森は専門知識を生かし、社会的な問題にも積極的に関与しました。オウム真理教による地下鉄サリン事件の際には、テレビ番組「朝まで生テレビ!」に出演し、有機化学者としての視点から事件を解説しました。これにより、化学の専門家が社会におけるリスクについて考える重要性を訴え、科学と一般社会との架け橋となる役割を果たしました。

受賞歴

森はその業績によって様々な賞を受賞しました。1965年には農芸化学賞、1981年には日本学士院賞（松井正直との共同研究による）、1992年には日本農学賞、さらに多くの国際的な栄誉を得ています。中でも2010年には瑞宝中綬章を受賞し、学問分野における多大な貢献が認められました。

著作

彼の研究の成果は、いくつかの著書として纏められています。『有機化学』Ⅰ～Ⅲ（養賢堂）、『生物活性天然物の化学合成』（裳華房）、『生物活性物質の化学』（化学同人）といった作品は、その理論と技術の基盤となる重要な文献です。

最期の年

2019年4月16日、森謙治は心筋梗塞により東京都文京区の病院で84歳で亡くなりました。彼の死によって日本の化学界は大きな損失を被りましたが、彼の業績は今もなお多くの研究者に影響を与え続けています。彼の名を冠したKenji Mori MedalがIsoprenoid Societyによって設立され、その成果は後世に受け継がれています。

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