有賀一郎

有賀一郎（ありが いちろう）は、1949年に生まれた日本のランドスケープ・アーキテクト（RLA）であり、樹木医でもあります。東京農業大学客員教授として教鞭を執る傍ら、街路樹診断士認定委員長を務めるなど、景観施策のアドバイザーとして多方面で活躍しています。環境再生医上級、全国さくら功労者、環境カウンセラー全国連合会（ECU）の環境教育環境学習インストラクターといった肩書も持ち、緑と環境に関する深い専門知識と豊富な実務経験を兼ね備えた人物です。

人物と背景

横浜市出身。その家族構成は、多角的な視点を育む土壌となりました。父は日本鋼管に勤務する鉄骨専門の建築技師、父方の祖父は東芝のエンジニアで家電の工業デザイナー。母は書家であり、母方の祖父は潜水艦の動力設計研究に携わり、東芝の役員待遇であったほか、東京菊の会の会長も務めていました。母方の祖母は江戸小紋の染め物屋の家系です。こうした多様な分野にルーツを持つ家庭環境は、有賀氏の論理的思考と創造性を融合させた仕事スタイルに影響を与えたと考えられます。

専門分野への道

1968年に青山学院大学高等部を卒業後、1973年に東京農業大学農学部造園学科で専門を学びます。同年、サンコーコンサルタント株式会社に入社し、ランドスケープの分野でキャリアをスタートさせました。

主要プロジェクトへの参画

キャリア初期の特筆すべき経験として、1980年から8年間、（株）オリエンタルランドへの出向があります。この期間、日本のエンターテイメント施設の代名詞ともいえる東京ディズニーランドの計画設計および開園・運営初期段階に深く関与しました。大規模なテーマパークの景観創造と管理に携わった経験は、その後の彼の幅広い活動に活かされています。

現在の活動

オリエンタルランドからサンコーコンサルタントに戻った後、同社で地域環境部長を経て現在に至るまで技師長を務めています。また、東京農業大学客員教授としての教育活動に加え、樹木医学会元副会長・現理事、街路樹診断協会理事、NPO自然環境復元協会理事など、専門分野に関連する多くの団体の役員を兼任し、業界の発展と普及に貢献しています。

代表的な業績と受賞歴

有賀氏の業績は多岐にわたりますが、特に「板橋サンシティ」におけるコミュニティ・ランドスケープの計画から長期的な育成への継続的な関与は高く評価されており、この功績により平成12年度（2001年）に日本造園学会賞を受賞しています。サンシティ関連では、計画コンペ採用（1976年）に始まり、東京農業大学造園大賞（1996年）、建築業協会賞（1981年）、緑の都市賞建設大臣賞（1983年、1999年）、CLA協会賞最優秀賞（2000年）など、数多くの賞を受賞しています。

その他の主なプロジェクトには、西武ライオンズ球場の計画設計やアセスメント（1979年）、船橋ららぽーとでの日本初のインドア街路樹の提案（1981年）、東京都新庁舎周辺の人工地盤緑地計画（1987年）、生物共生を目指した一之江境川親水公園（1990年）や海の公園（1991年）の設計、多自然型プールを導入した菊名池公園（1991年）、豊橋総合動植物公園のコンペ採用（1994年）、東金道路のミチゲーション設計（1994年）、彩の森入間公園景観計画設計（1995年）、現在も継続して関わる羽生水郷公園の計画設計（1995年-2010年）などがあります。また、東京都の初回街路樹診断（1999年）や行幸通りのイチョウ診断・保全（2003年-2006年）、神奈川の街路樹診断や桜古木診断治療など、樹木医としての診断・保全活動も精力的に行っています。帷子川でのヨシ保全活動で日本水大賞環境大臣賞を受賞（2001年）するなど、環境保全分野での功績も顕著です。六本木再開発における室内緑化計画（東京ミッドタウン、2004年）や海外プロジェクト（韓国サムスンエバーランド改修計画、2008年-2009年）にも携わるなど、その活動範囲は国内外に及んでいます。

著作

自身の専門知識や経験をまとめた著作も発表しており、主なものに『ルーラルランドスケープデザインの手法』（学芸出版社）、『ランドスケープのしごと』（彰国社）などがあります。

まとめ

有賀一郎氏は、ランドスケープの計画・設計から維持管理、そして樹木の医療や環境教育に至るまで、幅広い領域で日本の緑地空間の質向上と保全に貢献してきました。特に、人工的な環境と自然との調和、そして長期的な視点での育成・管理を重視する姿勢は、持続可能な社会におけるランドスケープのあり方を示すものです。その多岐にわたる業績と精力的な活動は、日本のランドスケープ分野の発展に不可欠なものと言えるでしょう。

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