服部伸

服部伸（はっとりしん）について

服部伸（本名：服部辰次郎）は、1880年6月2日に東京の浅草で生まれ、1974年12月4日に亡くなった著名な講談師である。彼の生涯は、浪曲師としての輝かしいキャリアと、講談へと転身した後の充実した活動に彩られていた。

初期の人生と浪曲師としての活動

服部伸は、父が経営する俥屋の家庭で育った。幼少期の彼は、親に連れられて初めて浪曲が演じられる寄席「長玉亭」を訪れ、そこから彼の芸事への興味が芽生えた。12歳のときに浪花節の語り手である浪花亭駒吉に弟子入りし、以後は浪花亭小吉として活動を始める。彼の初舞台は1893年の「長玉亭」であり、若い頃はヒラキ演目でも演じていたという。

服部伸は18歳で真打ちに昇進し、次第にその実力を高めていった。1903年には関東浪曲界を二分する「浅草組」と「神田組」の争いの影響で、改名して一心亭辰雄と名乗る。この名前で自由演芸会を立ち上げ、伊藤痴遊らと共に活動することとなる。彼は「節の奈良丸、啖呵の辰雄、声のいいのが雲右衛門」と称されるほどの名声を得ていった。

講談師としての転身

1936年、作家の長谷川伸から一字名をもらい、服部伸に改名して講談に転身した。彼の講談スタイルは、実直さとともに温かさを感じさせるもので、多くの観客から愛されていた。講談への移行は彼に新たな表現の機会をもたらし、多くの芸を通じてその魅力を発信し続けた。

1961年には、代表作「大石東下り」で芸術祭賞を受賞し、その業績は広く評価された。また、同年には勲五等双光旭日章を受章するなど、彼の影響力は文化界全体に及んでいた。

高齢でも現役を貫く

服部伸は90歳を超えても高座に上がり続け、その姿勢は多くの人々に感動を与えた。彼が講談界で築いた貴重な足跡は、後の世代の講談師たちにとっても大きな指針となった。1973年、講談協会が二団体に分裂した際には、高齢を理由に引退を余儀なくされたが、そのキャリアは多くの人々の記憶に留まっている。

1974年12月14日、服部伸はこの世を去った。彼の遺志は生涯にわたり残された多くの作品と、浪曲や講談文化への深い愛情で表現されている。彼の墓所は台東区の潮江院にあり、訪れる人々に感謝と尊敬の念を抱かせる場所となっている。

まとめ

服部伸は、浪曲師から講談師へと転身し、90歳を過ぎても現役で活動を続けた稀有な芸人であった。彼の生涯には、多くの挑戦と成功が刻まれており、彼が残した芸と人柄は今なお多くの人々に受け継がれ、語り継がれている。

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