伊藤痴遊

伊藤痴遊について

伊藤痴遊（いとう ちゆう）は、日本の講釈師として名高い、歴史的な人物です。この名跡は、特に明治から昭和初期にかけて活躍した初代と、後にその伝統を引き継いだ二代目によって受け継がれました。

初代伊藤痴遊の生涯

初代は1867年3月20日、日本の神奈川県横浜市で誕生しました。横浜小学校を卒業した後、家の近所に住む剣道の師匠、渋沢栄一の従兄弟に教えを受けることになり、その影響で剣道の門弟として彼の教えを深めました。しばらくして、渋沢の従兄弟が政治活動に参加し、自由党の創設に関与したことから、伊藤も党員として活動を始めます。

彼は政府の演説禁止という圧制に抗し、板垣退助の提案に応じて、講談を通じて社会的な主義を広めることに決めました。1890年には横浜で遊芸稼人（芸人）の鑑札を取得し、双木舎痴遊という号を掲げて講釈師としてのキャリアをスタートさせました。その後、政治活動を続けつつ、明治末からは東京府会議員、東京市会議員としても活動。1928年の第16回衆議院議員総選挙、1932年の第18回衆議院議員総選挙でも当選を果たしました。彼は1938年に世を去りますが、その墓所は多磨霊園にあります。

主な著書

初代は多くの著作を残しており、講談や落語関連の著作も数多く手がけています。例えば、1913年に出版された「巨人星亨」や「明治太平記」、そして1924年の「隠れたる事実 明治裏面史」等があります。また、日常の出来事から政治に関する深い考察まで、多岐にわたります。

二代目伊藤痴遊の歩み

二代目伊藤痴遊は、初代が築いた講釈の伝統を受け継ぎ、東京に生まれました。明治中学校を卒業した後、電気商や靴修繕業、バーテンなど様々な職業を経験しました。1940年から1945年にかけては、NHKでイタリア語のアナウンサーとして働く等、多才な経歴を持っています。

1951年11月、彼は田辺南鶴の門下で初舞台を踏み、そこから新たなキャリアをスタートさせました。初代が創立した「話術倶楽部」へも参加し、初代の女婿となることで、その家系とのつながりを深めます。1959年には二代目痴遊を襲名し、初代から受け継いだ政治講談や新講談を次代へと引き継いでいく役割を果たしました。

最後に

いずれの伊藤痴遊も、講釈師としてだけでなく、政治に対しても力強い影響力を持った人物でした。彼らの著作や活動は、当時の日本社会の動向を反映したものであり、現代においても重要な文化的資産として位置づけられています。初代、二代目それぞれの業績は、講談文化の発展に寄与し、今なお多くの人に影響を与え続けています。

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