服部治則

服部治則について

服部治則（はっとり はるのり）は、1920年7月18日に生まれ、2015年2月28日に生涯を閉じた日本の歴史学者・民俗学者です。山梨大学名誉教授であり、山梨郷土研究会の常任理事も務めました。その功績から正四位に叙されています。

生涯と学問

三重県上野市で生まれた服部は、1945年に東京文理科大学（後の東京教育大学）史学科国史科を卒業。その後、1947年に山梨師範学校（後の山梨大学）の助教授となり、研究者の道を歩み始めました。

柳田國男の調査に同行した経験から、歴史学と民俗学を組み合わせた独自の歴史[[民俗学]]的アプローチを確立。1950年代から60年代にかけては、山梨県独特の民俗事例である「親分子分慣行」の研究に注力しました。この慣行は、血縁関係のない者が親子のような関係を結び、親分が子分を経済的に庇護し、子分が親分に奉仕するという伝統的な人間関係です。

武田氏研究への深化

親分子分慣行の研究から、その起源を求めて、服部の研究対象は戦国時代の武田氏へと移行します。武田氏の寄親寄子制度と親分子分慣行には、擬似的な親子関係という共通点があると考えたのです。彼は、『甲斐国志』のような近世の地誌や系図を基礎資料としつつ、古文書の収集にも力を入れました。

服部は、武田家臣団の中でも特に有力な重臣層の系譜を詳細に考察しました。また、武川衆や津金衆のように、武田氏や徳川氏と主従関係を結んだ地域武士団、軍役衆など、階層の異なる氏族の親族関係も分析しました。さらに、系譜、諱、官途名、受領名の確定など、武田家臣団研究の基礎となる作業を丹念に進めました。

史料の編纂と刊行

服部は、磯貝正義とともに、史料の校注や編集にも携わりました。『甲陽軍鑑』や『王代記』、『塩山向岳禅菴小年代記』といった重要な史料の刊行に貢献し、後世の研究者にとって貴重な資料を提供しました。

研究の評価と継承

服部の研究は、武田家臣団の基礎研究として高く評価されていますが、発表の場が山梨大学の研究報告や郷土研究誌に限られていたため、一般には参照しにくい状況がありました。しかし、2007年に黒田基樹や平山優の尽力によって論集『武田氏家臣団の系譜』が刊行され、その研究成果が広く知られるようになりました。この論集によって、服部の業績は歴史研究に携わる人々に広く共有されるようになり、地域史研究に重要な影響を与えています。

主な著作

『親分子分と本家筋』（御茶の水書房、1978年）
『農村社会の研究』（御茶の水書房、1980年）
* 『武田氏家臣団の系譜』（岩田書院、2007年）

服部治則の研究は、歴史学と民俗学の融合によって、地域社会の歴史と文化を深く理解するための重要な道筋を示しました。彼の業績は、これからも多くの研究者や地域文化に関心を持つ人々に影響を与え続けるでしょう。

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