望郷 (1937年の映画)

映画『望郷』の概要

『望郷』（ぼうきょう）は、1937年に製作されたフランス映画で、原作はアシェルベ（アンリ・ラ・バルト）の小説です。この映画はジュリアン・デュヴィヴィエが監督し、ジャン・ギャバンが主演を務めています。撮影は1936年に行われ、詩的リアリズムの代表作として広く認知されています。物語の舞台は、フランス領アルジェリアの中心都市であるアルジェに設置されたカスバ、その絡み合った路地が描かれています。

あらすじ

物語は、カスバと呼ばれるアルジェの一角を舞台に展開されます。この場所は、様々な流れ者が集まり、お互いに干渉し合う無法地帯となっています。フランス本国から逃れた悪名高い泥棒ペペ・ル・モコ（ジャン・ギャバン）は、ここで約2年間隠れ住んでいます。彼はいつしかカスバの顔役となり、多くの仲間に囲まれることになります。忠実ながらも思慮に欠ける子分ピエロや、金銭欲が強い短気なカルロスといった仲間と共に生活し、同時に逮捕に迫るフランス警察の動きに怯えながら過ごしています。

一方、地元の敏腕刑事スリマン（グリドウ）は、ペペとの奇妙な関係を築きながら、彼を取り逃がさないように見張っています。カスバの住民との摩擦を避けながら、逮捕の機会をうかがうスリマンにとって、ペペは目の上のたんこぶのような存在です。

ある日、ペペは友人として交流を持っていたギャビー（バラン）という女性に出会います。彼女は故国からカスバを訪れた流れ者で、ペペに恋心を抱くようになります。ギャビーとの出会いはペペにとっての運命の転機となります。スリマンはこの機会を利用し、二人の逢瀬を手助けしますが、事を進めるにつれて彼には別の思惑があることが明らかになります。スリマンの計画により、ギャビーはペペが死んだと誤解し、パリへ帰る決意をします。

ペペはギャビーを追いかけ、彼女を探しに波止場へ向かいますが、これがスリマンの仕組んだ罠だったのです。待ち受けていたフランス警察によって逮捕されてしまいます。手錠をかけられたペペは、自身を逮捕した警察官たちの目の前で、逃げていくギャビーの姿を見送ります。その瞬間、ギャビーが客船の甲板に現れ、ペペは彼女に向かって叫びますが、彼の声は汽笛の音にかき消され、届くことはありません。失意の中、ペペは最後の手段として隠し持っていたナイフで自ら命を絶つという衝撃的な結末が待っています。

受賞歴とリメイク

『望郷』は1939年にキネマ旬報のベストテンで1位を獲得し、ナショナル・ボード・オブ・レビュー外国映画賞も受賞しました。この作品は、その後1988年にハリウッドで『カスバの恋』としてリメイクされ、同様に脚光を浴びています。

キャストとスタッフ

本作には、フジテレビで1971年に放送された際の声優陣がいます。主な声優としては、北村弘一、納谷六朗などが参加しています。また、DVD版では玉木有紀子、松平真之介らが声を当てています。監督のジュリアン・デュヴィヴィエをはじめ、脚本、音楽、撮影などのスタッフは、映画製作において重要な役割を果たしています。

このように『望郷』は、深いテーマと美しい映像表現が見事に融合した作品であり、今なお多くの人々に愛され続けています。

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