朝の小鳥

朝の小鳥（あさのことり）

『朝の小鳥』は、1953年5月に文化放送をキー局として放送が開始された、日本有数の長寿ラジオ番組です。番組開始当初は『四季の小鳥（しきのことり）』という名称でした。早朝のわずか5分という短い時間ながら、国内外各地の様々な野鳥たちの鳴き声を紹介し続けており、放送開始から現在に至るまでに約1500種類にも及ぶ鳥たちの声が紹介されてきました。

番組の根幹を支える野鳥の鳴き声の収録や構成、監修は、長年にわたり特定の専門家によって担われてきました。番組開始当初から53年間にわたりその任にあたったのは、鳥類研究家の蒲谷鶴彦氏です。一時期は弟の蒲谷芳比古氏と共に「蒲谷兄弟」として活動しましたが、高齢を理由に2006年7月、松田道生氏へと交代しました。蒲谷氏が最後に収録・監修を手がけたのは、2006年5月11日の愛鳥週間中のことでした。その後の2007年1月19日には、蒲谷氏が80歳で肺炎により亡くなったことが、『ニュース・パレード』内で報じられています。

松田氏は2代目の担当者として、2006年7月から2023年5月までの約17年間にわたり番組の収録や監修を務めました。そして、番組開始70周年を迎えた2023年5月、松田氏が勇退し、フィールドレコーディングの専門家であり公益財団法人山階鳥類研究所の特任専門員である岡村正章氏が3代目の担当者として就任しました。岡村氏は現在、番組の収録と構成を担当しています。

ナレーションも歴代のアナウンサーが務めてきました。長きにわたりナレーターを担当したのは、文化放送アナウンサーの高橋小枝子氏です。高橋氏は文化放送を定年退職するため、2007年9月30日の放送をもって番組を離れました。翌週の2007年10月7日からは、同じく文化放送アナウンサーの石川真紀氏がナレーションを引き継ぎ、2019年6月30日まで担当しました。現在のナレーションは、文化放送アナウンサーの鈴木純子氏が担当しています。

番組は長い歴史の中で様々な節目を迎えました。2018年6月20日には、放送開始65周年を記念した1時間の特別番組が制作・放送されました。この特番は、同年のプロ野球日本シリーズ中継に伴う文化放送の番組休止期間中に、一部ネット局向けの代替番組としても放送されています。

番組のオープニングを飾るテーマ曲には、エドヴァルド・グリーグ作曲の「ペール・ギュント組曲」より「朝」が使用されています。

番組を支えるスポンサーも時代と共に変遷してきました。長年、光学製品の輸入・販売を手がけるミックインターナショナル（スワロフスキー・オプティック日本総代理店）が提供しており、放送上は「世界の双眼鏡・スワロフスキー」として紹介されていました。2008年11月からは、バードウォッチングツアー専門旅行会社のワイバードに切り替わりましたが、ワイバードも2010年6月27日の放送を最後にスポンサーを降板しました。それ以降、番組は提供スポンサーなしの状態で放送が続けられています。かつては、カステラで知られる文明堂が単独で番組を提供していた時期もありました。

現在の放送体制は以下の通りです。

文化放送（キー局）: 毎週日曜日 5:15 - 5:20
LuckyFM茨城放送: 毎週日曜日 6:00 - 6:05 （※2021年10月より最終週のみ休止）
ABCラジオ: 毎週土曜日 5:00 - 5:05 （※2015年4月4日から放送）
新潟放送: 毎週日曜日 6:00 - 6:05

これまでにネットしていた、あるいは過去に放送実績のある放送局も多数存在します。確認されている範囲では、北海道放送、静岡放送、KBS京都、ラジオ関西、大分放送、長崎放送、NBCラジオ佐賀、山梨放送、琉球放送、東北放送などがありました。特にラジオ関西での放送時期は不詳ですが、文明堂一社提供だった時期ではないかと言われています。

早朝の澄んだ空気の中で響く野鳥の声は、多くのリスナーにとって心地よい目覚めや一日の始まりの彩りとなっています。半世紀以上にわたり変わらぬコンセプトで放送を続ける『朝の小鳥』は、日本のラジオ史における貴重な存在と言えるでしょう。

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