朝倉山椒

朝倉山椒（あさくらさんしょ）

朝倉山椒は、兵庫県養父市（やぶし）特産の山椒です。年に2回、6月から7月と9月に収穫時期を迎えます。但馬地方（たじま）の地域ブランドとしては「朝倉さんしょ」という名称で知られています。

特徴

朝倉山椒の原産地は、論文や現地調査から養父市八鹿町朝倉の今瀧寺（こんりゅうじ）とされています。柑橘系の爽やかな香りと、さっぱりとした柔らかな辛味が特徴です。一般的な山椒と異なり、枝に棘がなく、実がたくさんなるのも特徴の一つです。現在、日本全国で栽培されている山椒の多くは、この朝倉山椒の中から特に実が大きい苗木を交配・品種改良したものです。

歴史

朝倉山椒の歴史は古く、文献に残る最古の記録は慶長16年（1611年）に遡ります。生野奉行（いくのぶぎょう）の間宮新左衛門（まみやしんざえもん）が、駿府城（すんぷじょう）にいた徳川家康に献上したことが記されています。朝倉の集落で多く栽培されていたことから「朝倉山椒」と名付けられたと考えられています。

また、寛永年間には、出石（いずし）出身の名僧・沢庵和尚（たくあんおしょう）が松平阿波守（まつだいらあわのかみ）に朝倉山椒を贈ったという記録も残っています。さらに遡ること天正14年（1586年）には、豊臣秀吉が焦がした山椒を白湯に入れて飲み、その風味を喜んだという逸話も伝えられており、当時から山椒は高貴な身分の者への献上品として珍重されていたことが伺えます。江戸時代には、出石藩や篠山藩（ささやまはん）などから、枝付きの房のままの成熟した山椒が幕府へ献上されました。

江戸時代に入ると、朝倉山椒は俳諧や狂歌の題材としても取り上げられるようになります。延宝6年（1675年）には、狂歌師の半井朴養（なからいぼくよう）が「朝倉や　木の丸粒の　青山椒」と詠んでいます。

近年では、2010年（平成22年）に才木明（さいきあきら）氏を中心に朝倉山椒生産組合が再編され、9農家が約70アールで栽培、年間2000本の苗木を販売できる体制が整えられました。養父市の補助金制度や特産品開発事業も後押しとなり、生産量が増加しただけでなく、様々な加工品が開発されるようになりました。地元企業や生産出荷組合によって、「朝倉山椒のタプナード」（経済産業省「The Wonder 500」選出）、「山椒ジェノベーゼ」、「山椒味噌」、味付け海苔「朝倉さんしょ海苔」（2021年「5つ星ひょうご」認定）、朝倉山椒を白あんに練り込んだ「朝倉さんしょ大福 さんしょのきモチ」など、ユニークな商品が生まれています。

朝倉山椒は海外にも展開しており、2015年（平成27年）にはミラノ国際博覧会のイベントに出品、2020年（令和2年）には朝倉山椒味シロップが全日空の欧米路線ファーストクラスの機内食に採用されました。

現在、朝倉山椒は苗木の生産が需要に追いつかず、増産が難しい状況が続いています。その理由の一つが、定植地の不足です。この状況を打開するため、朝倉山椒ファンクラブが耕作放棄地を整備し、用地を確保するクラウドファンディングを実施し、目標額を達成しました。

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