朝倉貞景 (9代当主)

朝倉貞景：越前朝倉氏の全盛期を築いた戦国大名

朝倉貞景は、室町時代後期から戦国時代初期にかけて越前国を治めた戦国大名です。朝倉氏第9代当主として、弱冠13、4歳で家督を継承するという困難な状況の中、数々の難局を乗り越え、朝倉氏の全盛期を築いた人物として知られています。本稿では、彼の生涯と業績、そして人物像について詳しく見ていきましょう。

若年の家督相続と周囲の動向

文明18年（1486年）、父・朝倉氏景の死により、貞景は家督を継ぎました。しかし、幼少であったため、家臣団の統制に苦労したと伝えられています。長享元年（1487年）、室町幕府将軍・足利義尚の命を受けた六角高頼攻撃では、本隊を敦賀に留め、家臣である朝倉景冬を先陣として近江国坂本へ派遣しました。これは、同陣することを拒否した斯波義寛の訴えを受けた将軍の裁定によるもので、朝倉氏の越前支配が改めて承認された出来事でした。ただし、これは守護職の任命ではなく、越前国支配と将軍への直臣としての地位が認められたに過ぎませんでした。

複雑な政治状況と軍事行動

延徳3年（1491年）の延徳の乱では、将軍・足利義材による六角高頼攻撃に際し、貞景は出陣を見送りました。これにより斯波義寛から将軍へ訴えられ、一時、貞景征伐の噂まで出ましたが、朝倉氏の強大な兵力（『朝倉家記』には精鋭1万人、あるいは1番2000人あたりの6番編成で1万2000人と記されている）を背景に、討伐は回避されました。明応2年（1493年）の明応の政変では細川政元に協力し、将軍義材を捕らえる活躍を見せますが、その後は義材の下へ加勢するなど、複雑な政治状況の中で柔軟に対応しました。明応4年（1494年）の船田合戦には斎藤氏に味方し、自ら近江国柳ヶ瀬まで出陣するなど、積極的な軍事行動も見せています。

越前支配の確立と全盛期の到来

明応7年（1498年）、前将軍・義材が越前へ入ると、貞景はこれを歓待しましたが、上洛支援は拒否しました。義材の上洛失敗後、細川政元や加賀の本願寺門徒と対立する立場となりました。文亀3年（1503年）には一族内部の謀叛を鎮圧し、翌年には加賀からの朝倉元景の侵攻を撃退するなど、内部的・外部的な脅威を排除して自らの権力を確固たるものとしました。永正3年（1506年）の一向一揆との九頭竜川の戦いで勝利し、越前国における朝倉氏の支配を確立しました。この後、孫にあたる朝倉義景の時代（永禄10年、1567年）まで、越前国内は大きな戦乱に見舞われることなく、朝倉氏の全盛期が60年以上に渡って続きました。

宗教への信仰と芸術への造詣

貞景は深い信仰心を持つ人物としても知られ、京都の清水寺に法華堂（朝倉堂）を建立するなど、宗教活動にも熱心でした。一乗谷では南陽寺の方丈の再興、安波賀での経堂建立など、数々の寺社整備を行いました。また、永正3年（1506年）には、京の大和絵師・土佐光信に「京中図」（後に「洛中洛外図」と呼ばれるようになる）を描かせたという記録が残っており、芸術にも深い造詣を持っていたことが伺えます。これは、現存する「洛中洛外図」の最古の文献史料とされています。

死とその後

永正9年（1512年）、鷹狩りの最中に急死しました。享年40。その死によって、朝倉氏の全盛期の礎を築いた、若くして亡くなった傑物として、今もなお語り継がれています。その後、子の朝倉孝景（宗淳）が家督を継承し、朝倉氏の歴史は続いていきました。

まとめ

朝倉貞景は、幼少期からの困難な状況や複雑な政治情勢の中、卓越した政治力と軍事力で朝倉氏の繁栄を築いた人物です。宗教への深い信仰心や芸術への造詣の深さなど、多様な側面を持つ彼の人生は、戦国時代の混沌とした中で生き抜いた一人の戦国大名の姿として、現代においても大きな関心を集めています。

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