朝吹英二

朝吹英二：激動の時代を駆け抜けた実業家

朝吹英二は、1849年に豊前国（現在の大分県）の庄屋の次男として生まれました。幼少期は、咸宜園や渡邊塾といった学問の府で学び、尊皇攘夷思想に傾倒します。しかし、後に開明的な思想に転じ、福澤諭吉の庇護を受けることとなります。慶應義塾で学び、卒業後は実業界へ進み、その手腕を発揮しました。

実業家としての活躍

三菱商会への入社を皮切りに、貿易商会で取締役を務めるなど、ビジネスの世界で頭角を現しました。一時、生糸輸出業で失敗を経験するも、その負債を全て返済し、再起を果たしました。その後、義兄である中上川彦次郎の紹介で三井財閥に入り、鐘淵紡績や三井工業部で要職を歴任しました。中上川の死後、三井合名専務理事、王子製紙の取締役会長に就任し、王子製紙や芝浦製作所などの経営再建にも尽力しました。その活躍から「三井の四天王」の一人として名を馳せました。

しかし、中上川の死後、三井財閥の実権は益田孝に移り、朝吹は1912年に三井家を勇退することとなります。その後も、日本の実業界において「一種得易からざる老偉人」として尊敬を集めました。1918年、70歳でその生涯を閉じました。

文化人としての側面

朝吹英二は、実業家としての顔だけでなく、文化人としての側面も持ち合わせていました。骨董を愛し、柴庵と称して目利きとしても知られていました。また、歴史にも関心が深く、江戸時代には悪人とされていた石田三成の顕彰に力を注ぎ、歴史学者に委嘱して伝記を執筆させるなど、熱心な活動を行いました。

一族と家系

朝吹家は代々続く庄屋であり、その邸宅は29室にも及ぶ大邸宅でした。現在、その跡地は公園や公民館として地域に活用されています。朝吹の息子である朝吹常吉は、三越の社長を務めるなど、実業界で活躍しました。また、孫にはフランス文学者の朝吹三吉や翻訳家の朝吹登水子、曾孫には詩人の朝吹亮二がおり、文化的な一族としても知られています。さらに、弟の曾孫にはノーベル化学賞を受賞した野依良治がいます。また、玄孫には芥川賞作家の朝吹真理子がいます。

朝吹英二は、激動の時代を生き抜き、実業家として大きな功績を残した人物です。同時に、文化や歴史を愛する教養人としての側面も持ち合わせていました。彼の生涯は、日本の近代化を支えた実業家の姿を今日に伝えています。

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