朝比奈泰彦

朝比奈 泰彦 (あさひな やすひこ)

朝比奈 泰彦は、1881年4月16日に東京市本所区（現在の東京都墨田区）に生まれた日本の薬学者であり、薬化学者です。東京大学名誉教授として活躍し、薬学博士の称号を持つ彼は、帝国学士院の会員でもあり、文化勲章を受章したことでも知られています。

略歴

彼は東京府士族の家系に生まれ、幼少期から勉学に励みました。旧制府立一中、旧制第一高校を経て、東京帝国大学医科大学の薬学科を卒業します。その後、大学院に進学し、助手としてのキャリアをスタートさせました。

彼のキャリアの転機となるのは、1909年にヨーロッパに渡った時です。ここでリヒャルト・ヴィルシュテッターやエミール・フィッシャーの指導を受け、1910年には薬学博士の学位を取得しました。2年後には東京帝国大学の助教授に就任し、1918年には教授へと昇進しました。

彼の研究は特に和漢薬に関する化学的な分析に集中しました。1923年には「漢薬成分の化学的研究」により帝国学士院恩賜賞を受賞し、1943年には文化勲章を受賞しています。1951年には文化功労者に認定され、知識と貢献が評価されました。彼の墓所は青山霊園にあります。

人物

朝比奈は、1912年に東京帝国大学で講座を担当し、その後約30年間にわたってフラバノン関連の研究や、さまざまな和漢薬成分の化学的な探求を行いました。特にサクラニンやナリンギンなど、数多くのフラバノンに関する研究が評価されました。

彼はまた、1933年に創刊された『植物研究雑誌』の編集主幹を引き継ぎ、戦中から戦後を通じて1975年まで続けました。さらに、1951年には牧野富太郎が所有していた標本を整理するため、「牧野博士標本保存委員会」を発足させ、国庫からの補助金を得てその作業を進めました。

生前、彼はノーベル化学賞の候補になったことが何度かありましたが、受賞に至ることはありませんでした。

栄典

1935年には勲二等瑞宝章が授与され、彼の業績は公に認められました。彼の研究成果は、薬学の発展に寄与しただけでなく、後の世代の研究者たちに大きな影響を与えました。

家族・親族

朝比奈家の家族については、彼の父は和四郎という士族であり、母は静岡出身のことという女性でした。彼の子どもたちの中には、昆虫学者として知られる次男・正二郎、南極探検家として名を馳せた四男・菊雄など、各分野で活躍する人物が多くいます。

著書と論文

彼が残した著書には、『日本隠花植物図鑑』や『私乃たどった道』などがあり、多くの論文も発表されています。彼の研究は、日本の植物や薬物の科学的理解を深める上で重要な基盤となりました。

参考文献

朝比奈泰彦の業績は、薬学の分野だけでなく、植物研究の歴史においても重要な位置を占めています。多くの研究者が彼の研究を引き継ぎ、現代の薬学に新しい視点をもたらしています。

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