朝苧社

朝苧社について

朝苧社（あさおしゃ）は、愛知県名古屋市の緑区に存在する神社です。この神社は、熱田神宮の境外末社として知られています。大高インターチェンジから約400メートルの距離にあり、周辺には氷上姉子神社も位置しています。ここは「姥神山」と呼ばれる小高い丘の奥にあり、静かな環境が特徴です。山の標高は約29メートルであり、自然に囲まれた場所に祀られています。

祭神とその由来

朝苧社では、火上老婆霊（ひかみうばのみたま）が祭神として祀られています。この神は、近世においては「火高里之大老婆」や「大老婆公」とも称されており、地域では「老姥神（うばがみ）様」と呼ばれることもありますが、具体的な神名については諸説あり、詳細は不明とされています。この神は日本武尊の伝説とも関わりがあり、草薙神剣を斎き奉る宮簀媛命（みやすひめのみこと）が、その神霊であるとも言われています。さらには宮簀媛命の母神や乳母としての役割もあるとされ、様々な伝承が残っています。

朝苧の「朝」は麻を指し、「苧（を）」は繊維を示します。宮簀媛命が神御衣を織っていたことから、衣服女命（みそひめのみこと）という神名も持ちます。このため、この神社は女性や母性を象徴するものとしても崇敬されています。実際に、母乳の出ない女性が祈願することで霊験があるとは、地域の人々にも伝えられています。

歴史的背景

朝苧社の創建については明確な年代は不詳ですが、1482年の文献にはその名が見られ、1510年には祝詞も現存しています。このため、少なくとも室町時代中期には存在していたことがわかります。江戸時代中期に描かれた『氷上山之図』には、天神や山神に囲まれた社殿が描かれていますが、姥神山全体が神社の境内であったことも示唆されています。

この神社は、かつて氷上姉子神社の摂社として重要視されており、数々の祭事が行われてきました。特に、宮簀媛命が関わる祭りでは、神輿が朝苧社に神幸し、荘（かざ）られた道具が神前に供えられる「御衣祭」が行われていました。

姥神山と久米氏

姥神山の歴史には久米氏の存在が影響を与えています。この山は宮簀媛命の隠れ棲みの地であり、久米直七拳脛が初代神官としてこの地に根付いたとされています。彼の子孫である久米氏は、古来よりこの地に住み続け、現在もこの山の近くに居を構えています。この地域からは、様々な考古学的な発見があり、弥生時代の土器や中世の遺物も確認されています。また、久米氏の墓所もこの地区に存在し、歴史的な背景が色濃く残っています。

結論

朝苧社は、地域の文化や歴史を紡ぐ重要な存在です。その祭神や伝説は今なお多くの人々に親しまれ、神社の存在は愛知県名古屋市における信仰の一翼を担っています。これからもこの神社が地域の人々によって大切にされていくことでしょう。

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