朝野久美

朝野 久美

概説

朝野 久美氏は、1987年4月22日に兵庫県新温泉町に生まれ、2008年8月12日に21歳で亡くなった、日本のシッティングバレーボール選手です。中学時代に発症した骨肉腫により片足を失うという困難を乗り越え、シッティングバレーボールという新たなスポーツで才能を開花させました。北京パラリンピックの日本代表に選ばれるなど、その将来を嘱望されていましたが、病の再発により、無念にも開幕直前に短い生涯を終えました。

生涯

病との闘いと新たな出会い

故郷である兵庫県新温泉町で育った朝野氏は、中学時代にはバレーボール部に所属し、活動に打ち込んでいました。しかし、中学3年生の時、突然の病魔が彼女を襲います。診断されたのは骨肉腫でした。この病は進行が早く、治療のために左足のひざ下を切断するという、厳しい選択を迫られました。壮絶な手術の後、彼女は病と向き合うため、約1年半にも及ぶ長い入院生活を送ることになります。

退院後、朝野氏は社会人としての生活を始め、地元である新温泉町の土木事務所に就職しました。その後の2006年3月、リハビリテーションを行う中で、担当の理学療法士から一つのスポーツを紹介されます。それが、座位で行うバレーボール競技、シッティングバレーボールでした。下肢に障害を持つ人もそうでない人も、座った姿勢でプレイするという特性を持つこの競技に、朝野氏は新たな可能性と、再びスポーツに取り組む喜びを見出しました。

競技者としての飛躍

シッティングバレーボールの世界に足を踏み入れた朝野氏は、その持ち前の運動能力とバレーボール経験を活かし、競技者として急速に頭角を現します。懸命な練習と努力を重ね、国内の大会で実績を積み上げました。彼女の目標は、世界の舞台、特にパラリンピックに出場することでした。

その目標が現実のものとなる日が訪れます。2008年5月、北京で開催されるパラリンピックのシッティングバレーボール競技において、彼女は日本代表選手団の一員として選出されました。これは、病を乗り越え、新たな道で頂点を目指してきた彼女にとって、これまでの努力が実を結んだ瞬間であり、大きな喜びであったことでしょう。代表選出は、周囲の人々にも希望と感動を与える出来事となりました。

早すぎる終焉

北京パラリンピック日本代表に選ばれ、夢舞台への扉を開きかけた朝野氏でしたが、その体に再び病魔が忍び寄っていました。順調に見えた競技生活の裏側で、骨肉腫は再発し、今度は左胸に腫瘍となって転移していたのです。代表選出後、彼女の容態は徐々に悪化していきました。

2008年7月末からは、更なる治療のため、鳥取県米子市内の病院に入院することになります。病院では、転移した腫瘍に対する懸命な抗がん剤治療が続けられました。しかし、病状の進行は速く、治療の甲斐なく、左胸壁に転移した腫瘍が彼女の命を蝕んでいきました。そして、北京パラリンピックの開幕を目前にした2008年8月12日、朝野久美氏はわずか21歳という若さで、その短い生涯を閉じました。

困難な病と闘い、新たな道で光を見出し、パラリンピック出場という夢を掴みかけた朝野氏の生涯は、多くの人々に勇気と感動を与えました。彼女がシッティングバレーボールに捧げた情熱と、逆境に立ち向かった姿は、今なお人々の記憶に深く刻まれています。

もう一度検索