朝霧 (吹雪型駆逐艦)

駆逐艦「朝霧」：太平洋戦争初期を駆け抜けた吹雪型駆逐艦

駆逐艦「朝霧」は、日本海軍が建造した吹雪型駆逐艦（特型）の13番艦で、特II型に分類される3番艦です。同型艦の中でも「霧級」に属し、その名を受け継ぐ艦としては、春雨型駆逐艦に次いで2隻目となります。ここでは、「朝霧」の生涯を、その就役から太平洋戦争での最期までを詳しく見ていきましょう。

竣工と初期の活動

1930年（昭和5年）6月、佐世保海軍工廠で竣工した「朝霧」は、同年12月に新編された第8駆逐隊に配属されます。その後、1939年（昭和14年）に第8駆逐隊は「第20駆逐隊」へと改称されました。

太平洋戦争開戦と南方作戦

太平洋戦争（大東亜戦争）が開戦すると、「朝霧」は引き続き第20駆逐隊に所属し、他の霧級駆逐艦（天霧、夕霧、狭霧）と共に、第三水雷戦隊の一員として南方作戦に参戦します。マレー作戦や蘭印作戦では、連合軍の商船や小艦艇の掃討作戦に従事しました。

1942年（昭和17年）には、戦没した狭霧の代艦として姉妹艦の白雲が編入され、第20駆逐隊は4隻体制となります。その後、アンダマン・ニコバル諸島攻略作戦、ベンガル湾機動作戦、ミッドウェー作戦など、各地の作戦に参加しました。

ガダルカナル島攻防戦と最期

1942年8月、ガダルカナル島攻防戦が開始されると、第三水雷戦隊は日本陸軍川口支隊の輸送任務に就きます。しかし、進撃中に上級部隊からの命令変更により、第20駆逐隊だけでガダルカナル島へ向かうことになります。

1942年8月28日、「朝霧」はサンタイサベル島付近で、ガダルカナル島のヘンダーソン飛行場から飛来した米軍のSBDドーントレス急降下爆撃機による空襲を受け、沈没しました。同時に空襲を受けた「夕霧」と「白雲」も大破し、第20駆逐隊は「天霧」のみとなり、10月1日付で解隊されました。

艦歴の詳細

太平洋戦争以前

• - 1928年（昭和3年）9月11日、「天霧」と共に吹雪型駆逐艦に類別
• - 1928年12月12日、佐世保海軍工廠で起工
• - 1929年11月18日、進水
• - 1930年6月30日、竣工
• - 1930年12月1日、第8駆逐隊を新編
• - 1931年1月末、姉妹艦「狭霧」が第8駆逐隊に編入
• - 1932年5月19日、「狭霧」が第10駆逐隊へ転出
• - 1937年以降、日中戦争で上海、杭州湾上陸作戦、北部仏印進駐に参加
• - 1939年11月1日、第8駆逐隊が第20駆逐隊に改称
• - 1940年5月1日、第三水雷戦隊を新編、第20駆逐隊が所属
• - 1940年8月1日、「狭霧」が第20駆逐隊に復帰
• - 1940年9月、北部仏印進駐にともなう陸軍輸送船団護衛任務に従事

太平洋戦争前期

• - 開戦時、第三水雷戦隊に所属し、南方作戦に参加
• - 1941年12月24日、姉妹艦「狭霧」が撃沈
• - 1942年1月、マレー半島エンダウ沖海戦に参加
• - 1942年2月、シンガポール方面での連合軍艦船捕捉に従事
• - 1942年3月10日、駆逐艦「白雲」が第20駆逐隊に編入
• - 1942年4月、ベンガル湾機動作戦に参加
• - 1942年5月下旬、ミッドウェー作戦に参加
• - 1942年7月下旬、「Ｂ作戦」に参加のため、メルギーに進出
• - 1942年8月23日、トラック泊地に進出
• - 1942年8月28日、サンタイサベル島付近で沈没

沈没時の状況

「朝霧」は、ガダルカナル島への輸送作戦中に米軍機の空襲を受けました。攻撃地点は南緯08度13分 東経160度07分と記録されており、日没直前に2発の爆弾が命中しました。1発目は缶室で大火災を引き起こし、2発目は前部魚雷発射管に命中、魚雷の誘爆により轟沈しました。

この攻撃で艦長を含む8名が生存、128名が戦死しました。また、川口支隊の兵士も多数が犠牲となりました。

1942年10月1日、「朝霧」は駆逐艦籍から除籍され、第20駆逐隊も同日付で解隊されました。

歴代艦長

「朝霧」の歴代艦長には、池田七郎中佐、安富芳介中佐、難波祐之中佐、門前鼎中佐、木村昌福中佐、橘正雄中佐、松原博中佐、阿部俊雄中佐、井上良雄中佐、宇垣環少佐、荒井靖夫少佐、前川二三郎少佐などがいます。

「朝霧」は、その短い生涯の中で、太平洋戦争初期の重要な作戦に参加し、多くの戦果を上げましたが、ガダルカナル島攻防戦でその姿を消しました。その名は、日本海軍の歴史に深く刻まれています。

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