朝霧の巫女

朝霧の巫女：妖と巫女、そして現代の物語

『朝霧の巫女』は、宇河弘樹氏による漫画作品であり、副題に『平成稲生物怪録』を冠している。2000年3月号から2007年8月号にかけて『ヤングキングアワーズ』で連載され、全9巻で完結した。広島県三次市を舞台に、現代を生きる少年と巫女たち、そして彼らをとりまく数々の妖たちが織りなす物語は、多くの読者や視聴者を魅了した。

物語のあらすじ

主人公の天津忠尋は、母親の置き手紙を頼りに、数年ぶりに広島県三次市へとやってくる。そこは、彼のいとこである稗田三姉妹が暮らす場所だった。到着早々、忠尋は天狗の面をつけた怪人、乱裁道宗とその配下の妖怪たちに襲われるが、稗田三姉妹に助けられる。しかし、それは始まりにすぎなかった。以後、忠尋は日常的に妖怪の襲撃にさらされ、やがて日本の存亡をかけた壮大な戦いに巻き込まれていくことになる。

物語には、昭和霊異記3部作にも登場するキャラクターが登場し、過去と現在が交錯する複雑な展開を見せている。忠尋は代々「審神者」の力を受け継ぐ天津一族の末裔であり、その能力ゆえに、妖と朝廷、双方から注目を集める存在となっている。

主要登場人物

天津家:

天津忠尋: アルビノの少年。病弱だが、審神者の力を持つ。
天津結実: 忠尋の母親。陰陽寮の重職に就く。
天津忠寿: 忠尋の父親。猫又のこまを母に持つ。
天津忠明: 忠尋の祖父。かつては骨董屋を営み、妖たちを保護していた。
こま: 猫又の妖怪。忠明を愛し、忠尋を見守る。
花於: 忠明に保護された下駄の付喪神。

稗田家:

稗田柚子: 三姉妹の次女。忠尋に恋心を抱く。
稗田倉子: 三姉妹の長女。霞彩高校の教師であり、巫女でもある。
稗田珠: 三姉妹の三女。
稗田直範: 稗田家家長。
稗田御幸: 柚子たちの母親。稲生神社の宮司。

日本政府・その他:

日瑠子: 天皇（女帝）。
平田篤瀧: 六波羅機関の戦闘要員。霞彩高校の教師。
斉藤: 警視庁抜刀隊隊長。
乱裁道宗: 天狗の面をつけた怪人。「山の民」のリーダー。
楠木正志: 忠尋の同級生。乱裁道宗の正体。
熊沢菊里: 乱裁道宗と共に「主上」に仕える少女。
主上: 乱裁や妖たちの長。スサノオがその正体。

アニメ版

2002年には、全26話でテレビアニメが放送された。オープニングとエンディングを含めて約15分のショートアニメ形式で、原作とは異なるオリジナル要素も盛り込まれている。特に、敵役として設定された禍津日神「ヤガレナ」とその配下、黄昏の巫女の存在はアニメ版の特徴と言える。アニメ版では、稗田柚子や巫女委員会の面々が活躍する場面が多く見られた。

関連商品

舞台となった三次市では、作品にちなんだ様々な関連商品が販売された。清酒「朝霧の巫女」、限定ビール、泡雪三姉妹（三次銘菓泡雪を「朝霧の巫女」の絵柄のパッケージにしたもの）、ポストカード、お守りなど、多様な商品がファンを喜ばせた。

まとめ

『朝霧の巫女』は、妖怪、巫女、現代社会という異質な要素が融合した、独特の世界観を持つ作品である。漫画とアニメ、そして三次市での関連商品展開を通じて、多くのファンに愛され続けている。その魅力は、時代を超えて、今後も語り継がれていくであろう。

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