朝鮮勢法

朝鮮勢法（ちょうせんせいほう）

朝鮮勢法は、李氏朝鮮時代に発展した双手剣の武術で、中国の伝統的な剣術に由来しています。この技術は、明代末期に茅元儀という兵学者が、朝鮮に残されたさまざまな文献や口伝を基に、1621年に著した『武備志』の中で整理されました。朝鮮勢法では、諸刃の直刀を利用し、初めに学ぶ4つの基本技法に加え、さらなる攻撃的な技が数多く紹介されています。

歴史的背景

唐の太宗の時代には、剣術は実戦での力強さが評価されて多くの剣士が存在しましたが、明代になると剣術自体が衰退し、その技術はほとんど失われることとなります。残された剣術の秘訣は『剣訣歌』という文献に見られるのみでした。しかし、一方で、朝鮮半島には失われずに伝承された剣法が存在しており、それが茅元儀によってまとめられたことで朝鮮勢法として知られるようになったのです。

資料は少ないものの、「豹頭撃」といった用語が『水滸伝』と似ていることから、この剣法が形成されたのは宋や元の時代、あるいはそれ以前であると考えられています。また、明代に対倭寇戦で名を馳せた兪大猷が習得した剣法と類似性も指摘されています。茅元儀に朝鮮勢法の情報を提供した人物の正確な名前は不明ですが、文禄・慶長の役に参加した際に持ち帰ったのではないかと考えられています。この頃、中国にはすでに新しい武芸の教本が存在していたため、多くの技法はそちらからの影響を受けているとも言われています。

さらに、この戦役を通じて中国から朝鮮へ多くの武藝が伝来し、「朝鮮十八般武芸」が形成されることになります。1790年には、朝鮮王正祖のもとで『武芸図譜通志』が成立しましたが、残念なことに先に編纂された朝鮮勢法の技は含まれておらず、別の「鋭刀譜」が代わりに収められました。このことや演練法の有無によって、両者の関係は不明瞭なままです。韓国の十八技保存会は、朝鮮勢法が「鋭刀」に受け継がれていると主張しています。

剣道との関連性

日本の剣道との関係においては、朝鮮勢法と日本の剣術の間に類似性が見受けられます。たとえば、特定の構えや技の名称が両国で共通している点は、双手剣の技法が日本に影響を与えた証拠とされています。しかし、それぞれの動作や技法が同じであるとは証明されておらず、さらに研究が必要であるとの意見もあります。

このように、朝鮮勢法は独自の発展を遂げながらも、他国の剣術と交流を持ち続けてきたことが確認できます。また、1980年代には韓国の武道団体によって再発見され、復元作業が行われているため、今日でも一部の技術が披露されています。これにより、朝鮮勢法はその歴史を経て現代に引き継がれ、多くの武道愛好者に影響を与え続けています。

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