朝鮮民主主義人民共和国の文化

北朝鮮の文化

北朝鮮の文化は、同じ民族が暮らす韓国と共通点が多い一方で、政治体制や主体思想の影響を強く受けています。文化は「社会発展の各段階で達成された科学技術、文学芸術、道徳、風習などの発展水準を反映する」ものと定義され、物質文化と精神文化に区分されます。また、各国の文化は「固有の民族的特性」を持ち、階級社会では文化は階級的性格を帯びるとされています。

主体文芸理論

北朝鮮における真の芸術とは、「時代の要求と人民大衆の指向を正しく反映し、人々に生活の本質と美しさ、社会発展の合法則性を明らかにするのに寄与する」芸術とされます。美しさの評価は、人間の社会的階級を中心に考えられ、美しさは事物そのものではなく、人間の自主的な要求と指向に合致することによって生まれるとされます。主体思想では、人間は自主性に基づいた要求と指向を持ち、人間の利益が最優先であるとされ、人民大衆の観点から物事を捉え、人民大衆の要求に合致するか否かで美醜が決定されます。

社会主義的写実主義

社会主義的写実主義は、可能な限り忠実に現実を再現する思想です。北朝鮮では、主体写実主義がこの時代の唯一の創作方法とされ、人民大衆が歴史の主人公である主体時代であるため、主体的な観点から社会を見る必要があるとされています。芸術においては、主体思想の中核である首領を中心に据え、それを芸術的に具現することが重視されます。特に、人民大衆が社会の主体として立ち上がるための絶対条件として、「労働者階級の革命領袖」である首領を芸術的にどのように描くかが核心となります。

典型

社会主義的写実主義の創作方法では、「個別性を通じて普遍的な社会的意義を持つ一般的で本質的なものを示す」ことが強調されます。これは、特定の階級や集団の共通する本質的な特性を、文学作品の中で個別化された人物に反映させ、時代の特性を一般化することを目指します。例えば、富裕層の人物を慈悲深い存在として描くことは、社会主義創作方法に反するとされ、富裕層は偏屈で悪者として描かれるべきとされます。

チョンジャ（種子）論

チョンジャ（種子）論は、芸術作品の創作を植物の種子に例え、作品が伝えたいテーマ意識を核として捉える理論です。この理論は金正日が1973年に発表した『映画芸術論』で初めて提起され、芸術と生活の問題を取り上げ、「時代と革命の要求に合う趣旨を探求すること」を強調しました。

速度戦

北朝鮮の文化芸術創作で強調される速度戦は、単に作品を早く制作することだけでなく、芸術性と内容性を兼ね備えた質の高い作品を最大限早く創作することを意味します。芸術家には、芸術的創造力に加え、党の政策を迅速に人民に伝え、政策に従わせるための能力が求められます。

文学・芸術

北朝鮮の文学・芸術を統括する団体として、朝鮮文学芸術総同盟（文芸総）があります。文芸総は、作家、芸術家を組織化し、党の路線と政策を文学芸術に反映させる役割を担います。文芸総の下には、作家同盟、美術家同盟、音楽家同盟など7つの同盟団体があります。全ての作家、芸術家は文芸総とその傘下同盟に所属することが義務付けられています。

文学

金日成国家主席の業績を描いた「首領形象文学」が重要な位置を占めており、首領の偉大性を強調する作品が多く創作されています。また、社会主義リアリズム文学理論には、「無葛藤性理論」が存在し、社会主義社会には葛藤は存在しない、または非敵対的なものであるとされます。ただし、この理論は首領形象文学に限定的に適用され、歴史文学や外国文学も存在します。歴史文学では、洪命熹の「林巨正」が有名です。

映画

映画は、北朝鮮において強力な宣伝手段と位置づけられ、人民に党の政策を伝え、共産主義的な人間形成を促す役割を担います。映画は、芸術映画、記録映画、科学映画、児童映画に大別され、芸術映画は教養や宣伝色が強く、記録映画は指導者の活動を記録し、科学映画は科学知識の普及、児童映画はアニメーション作品が多いです。

音楽

北朝鮮は「歌にあふれた国」と自称し、「音楽政治」という言葉があるように、音楽が政治宣伝に重要な役割を果たしています。音楽は民族性と日常性が重視され、大衆が親しみやすい形で社会主義思想を表現することが求められます。普天堡電子楽団や牡丹峰楽団などが有名で、革命歌謡や叙情的な歌も存在します。

文化遺産

北朝鮮は非物質文化遺産保護にも力を入れており、アリラン、キムチ、シルムがユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。特にシルムは南北共同登録です。また、平壌と南浦には、ユネスコ世界遺産に登録された高句麗古墳群が存在します。

これらの要素が複雑に絡み合い、北朝鮮独特の文化を形成しています。

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