朝鮮民主主義人民共和国の文法論

朝鮮民主主義人民共和国の文法論

朝鮮民主主義人民共和国、通称北朝鮮における文法論は、同国の社会科学院や金日成総合大学を基盤に進展してきた朝鮮語の文法に関する理論体系を指します。本論文では、主に1980年代以降の北朝鮮の文法論について、形態論および統辞論の観点から概観します。

北朝鮮の文法論の歴史

北朝鮮文法論の歴史は、構造的に3つの時期に分けることができます。最初の時期は黎明期と呼ばれ、解放直後から朝鮮戦争にかけての期間であり、この時期には洪起文や李克魯、金寿卿などの先駆的な研究者によって朝鮮語の基礎が築かれました。これらの研究は伝統的な文法理論に加え、ソ連言語学の要素も取り入れられ、言語学の発展に寄与しました。ただし、この段階ではソ連言語学の概念は十分に消化されていないことも特徴でした。

次の発展期は1960年代で、朝鮮戦争終結後、多くのソ連および中国の研究成果が北朝鮮に導入され、朝鮮語学が飛躍的に進展しました。科学院言語学研究所が発行した『朝鮮語文法1』および『朝鮮語文法2』はこの時期の集大成であり、以降の北朝鮮の文法論の基礎を築いています。

主体思想が本格化した1970年代以降は、外国からの影響が薄まり、北朝鮮内での再生産傾向が強まりました。この結果、文法論は停滞の様相を呈し、1980年代後半に至っても基本的な枠組みは変わらず、2011年に発行された『朝鮮文化語文法規範（第2版）』で一部の用語が改訂されたものの、本質的な変化は見受けられませんでした。

形態論の変遷

1960年代には、文法体系における品詞や造語の研究が形態論に含まれていましたが、1980年代以降はこれらはそれぞれ品詞論と造語論に分割されました。形態素という概念も重視され、語根、接頭辞、接尾辞、さらには「吐（토）」と呼ばれる要素が考慮されています。

「吐」とは本来口訣を指す言葉でしたが、北朝鮮の文法論では語幹に付随して文法的機能を担う部分を指します。韓国語ではこれに該当するのが助詞や語尾です。

用言の語形と文法範疇

用言については、語形が終結形、接続形、冠形、修飾形と4つに区分されています。このうち、接続形は複文を形成する重要な要素であり、修飾形は用言自体を修飾する役割を果たします。

さらに、用言の文法範疇には叙法、待遇法、態、尊敬、時制が含まれています。叙法は文の構成を意識する上で重要な要素であり、待遇法では文中の対称に応じて言葉の使い方が異なることが示されています。

統辞論の枠組み

北朝鮮の統辞論は、ソ連の理論を基にしており、主に単語と単語の結びつき、文全体に関する理論に分かれます。単語の結びつきは、従属的結びつき、並列的結びつき、そして同じ形態を持つ単語の並列的結びつきといった種類に分けられます。

文はその構造に応じて陳述文、疑問文、命令文など、さまざまに分類されます。文が成り立つためには、陳述性が重要な要素であり、モダリティや時制、待遇法などが相互に関連しています。

結論

北朝鮮の文法論は、独自の文化的背景と歴史的経緯を反映した特徴的なものです。形態論と統辞論はその中心に位置し、今後の研究においてさらなる深化が期待されます。本論文では、北朝鮮における文法論の基礎を概観しましたが、今後の詳細な研究が望まれます。

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