朝鮮民主主義人民共和国の経済史

朝鮮民主主義人民共和国の経済史

朝鮮民主主義人民共和国の経済史は、1945年の第二次世界大戦終了後から、現在に至るまでの北朝鮮の経済の発展、構造、変遷を描いたものである。特に、ソビエト連邦による占領統治後の政治的、社会的背景の中での経済の変動は、多くの国民に影響を与え、現在に至るまでの経済政策や生活様式にも色濃く反映されている。

前史：日本統治時代の北朝鮮の経済

日本の統治下にあった朝鮮の北部、特に平安道と咸鏡道では、豊富な地下資源と山岳地帯の特性を活かした重化学工業が発展していた。一方、南部地域では農業や軽工業が中心であり、これにより朝鮮半島内での産業の発展に地域差が生まれていた。この地域差は、戦後に訪れる南北の分断に大きな影響を与えることとなった。

日本統治終了から朝鮮戦争まで

1945年、日本の降伏が決まり、南部はアメリカ、北部はソ連による占領下に置かれた。ソ連は金日成の指導のもと、北朝鮮の社会主義化を進め、土地改革や産業国有化を行ったことで、計画経済体制が確立した。1946年から1949年にかけては、経済再建が進み、生産高は増加したものの、朝鮮戦争の勃発により、計画は中断せざるを得なかった。

朝鮮戦争の影響とその後の復興

朝鮮戦争は1953年に休戦に至るものの、北朝鮮の経済基盤は深刻なダメージを受けた。戦後の復興期においては、重工業が優先され、農業も集団化が進められたが、労働力の不足や物資不足が依然として経済活動を阻む要因となった。この時期、外部からの援助もなくてはならない状況となり、これが後の経済政策にも影響を与えた。

中ソ対立と金日成の権力確立

1950年代後半には、中ソの対立が激化し、北朝鮮もその影響を受けていた。金日成は、韓国に対抗するための基地作りや重工業を重視する政策を進め、これが国民経済の偏りにもつながった。また、国内の運動による大衆動員が盛んになり、経済発展を目指す姿勢が強調された。

経済の混乱と金正日の影響

1970年代には、金正日が権力の座を固め、経済政策の変化が表面化した。西側諸国からの技術導入が進む一方で、経済の実態は悪化していく。特に、プラントの導入後、国際市況の変動により外貨を獲得できず、経済への負担が増した。また、金正日の指導の下で行われた生産増強運動は、現場に混乱をもたらし、生産効率を低下させる結果に繋がった。

社会主義圏崩壊以降の影響

1980年代から1990年代にかけて、社会主義圏の崩壊は北朝鮮経済に大きな影響を及ぼした。国際的な経済支援が減少する中、北朝鮮は食料不足と経済危機に直面し、1994年からの大飢饉では多くの人命が失われた。この悲劇は、統制の強化や外部からの介入を拒む姿勢を助長する結果となった。

金正恩の政策と市場経済の拡大

2011年に金正日が死去し、息子の金正恩が権力を握った。金正恩は、経済改革を進め、資本主義的な要素を取り入れるべく、新たな政策を打ち出した。市場経済が拡大する中で、一定の経済成長も見られたが、国内外の制約からその効果には限界があると指摘されている。

まとめ

北朝鮮の経済史は、内部の政治的・社会的変化と国際情勢への対応の中で、形作られてきた複雑なものである。独自の経済路線、特に重工業と軍事産業の偏重は、国民の生活や経済全体に持続的な影響を与え続けている。今後の北朝鮮経済の行方は、国際社会との関係や、内政の動向に大きく影響されるだろう。

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