木の葉天狗

木の葉天狗（このはてんぐ）

木の葉天狗は、江戸時代の随筆や怪談集など、様々な文献にその名を見ることができる天狗の一種です。別名を境鳥（さかいどり）とも呼ばれています。

概要

木の葉天狗は、一般的な鼻の高い山伏姿の天狗とは異なり、鳥のような姿で描かれることが多いのが特徴です。

寛保時代の雑書『諸国里人談』には、大井川（現在の静岡県）で夜間に大勢で魚を捕まえていたという木の葉天狗の目撃談が記録されています。この記録によれば、その姿は大きな鳥のようで、翼はトビに似ており、翼長は約1.8メートルもあったとされています。また、人の気配を感じるとすぐに逃げ去ってしまったと伝えられています。人間に似た顔と手足を持ち、くちばし、翼、尾羽を備えているという説もあります。

松浦静山の随筆『甲子夜話』には、静山の下僕である源左衛門が7歳の頃に天狗にさらわれ、天狗界での体験談が語られています。その中で、木の葉天狗は白狼（はくろう）とも呼ばれており、老いた狼が天狗になったものとされています。彼らは山で作った薪を売ったり、登山者の荷物を運んだりして、他の天狗たちが物を買うための資金を稼いでいるとされ、天狗の中でも地位は低いとされています。

山口県岩国の怪談を集めた『岩邑怪談録』には、木の葉天狗が人間をからかう話が収録されています。猟師の宇都宮郡右ェ門の前に、木の葉天狗が小僧に化けて現れ、「銃を撃ってみろ」とからかいます。郡右ェ門は小僧が木の葉天狗であることを見抜き銃を撃ちますが、木の葉天狗は驚くことなく「弾はここだ」と言って弾を猟師に返して姿を消したとされています。

この話から、地位の低い天狗であっても、ある程度の変化能力や神通力を持っていると解釈されています。当時の銃は、火薬と弾を別々に装填する形式であったため、弾を抜いて空砲にすることが可能でした。

一方で、河鍋暁斎の錦絵『東海道名所之内 秋葉山』には、樹上でくつろぐ木の葉天狗たちの姿が描かれており、彼らを術を持たない人畜無害な存在とする説も存在します。

このように、木の葉天狗は文献や地域によって様々な姿や役割で語られており、その多様性が魅力の一つとなっています。

脚注

『諸国里人談』
『甲子夜話』
『岩邑怪談録』
『東海道名所之内 秋葉山』

関連項目

烏天狗
日本の妖怪一覧

外部リンク

* 水木しげるロードの妖怪たち（境港市観光協会内）

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