木下宇三郎

木下宇三郎は、慶応元年（1865年）9月27日に肥後国菊池郡、現在の熊本県菊池市に生まれた。父は木下居中である。明治36年（1903年）1月、木下は家督を相続した。

軍人としての道を歩み始めた木下は、明治20年（1887年）7月に陸軍士官学校旧9期を卒業し、陸軍砲兵少尉に任官した。さらに研鑽を積むため、明治25年（1892年）12月、陸軍大学校（11期）に入学したが、翌年に日清戦争が勃発。戦況に応じて陸軍大学校を一時退学し、戦地へ出征した。終戦後、明治29年（1896年）2月には陸軍大学校に復学を果たし、明治30年（1897年）12月に卒業。卒業後は、陸軍の中枢である参謀本部に配属され、作戦立案などの重要な業務に携わることとなった。

日露戦争が勃発すると、木下は第1軍の作戦参謀として再び戦地へ赴いた。激戦の中で参謀としての能力を発揮し、満洲軍が創設された後、日本へ帰国。大本営陸軍部参謀として、戦争遂行に関わる最高意思決定機関の業務に携わった。

戦後も木下のキャリアは続いた。関東都督府参謀といった要職を歴任し、砲兵の専門家としての道を深めていく。明治40年（1907年）11月には砲兵大佐に進級し、陸軍野戦砲兵射撃学校長に就任。砲兵の射撃技術向上に貢献した。その後、野砲兵第24連隊長として部隊を率いる経験を積み、さらに第12師団参謀長として師団の運用に関与するなど、様々なポストを歴任した。

大正2年（1913年）7月、木下は陸軍少将に昇進。台湾総督府陸軍部参謀長に就任し、台湾における軍事行政の責任者の一人となった。その後も、野戦砲兵第2旅団長として再び部隊を率いる立場に戻り、陸軍砲工学校長として後進の育成にあたり、野砲兵監として砲兵部隊全体の監督を務め、教育総監部附として教育行政にも関与するなど、陸軍内の要職を歴任した。

大正6年（1917年）8月、木下は陸軍中将に進級。最高幹部の一員となり、第12師団長に親補された。これは、一個師団を指揮する重責であり、長年の軍歴における集大成ともいえるポストであった。約4年間にわたり師団長を務めた後、大正10年（1921年）7月、陸軍の規定に基づき予備役に編入された。

木下宇三郎には二人の娘がおり、それぞれ縁談を得ている。次女のスマは内務官僚であった三辺長治の妻となり、三女のリツ（律子）は宮内庁の女官を務めた後、陸軍中佐の原田隆道に嫁いだ。

明治・大正期を通して陸軍軍人として重要な経歴を歩んだ木下宇三郎は、昭和21年（1946年）1月27日に80歳でその生涯を閉じた。最終階級は陸軍中将、功三級の功績を挙げた人物である。

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