木之本興三

木之本興三：不屈の精神で日本サッカー界を牽引した男

木之本興三（きのもと こうぞう、1949年1月8日 - 2017年1月15日）は、千葉県千葉市出身の元サッカー選手、そして後に日本サッカーリーグ（JSL）事務局長、日本プロサッカーリーグ（Jリーグ）理事などを歴任し、Jリーグ創設に大きく貢献した人物です。

サッカー選手としてのキャリアと突然の病魔

木之本は、東京教育大学（現筑波大学）卒業後、古河電気工業サッカー部（現在のジェフユナイテッド市原・千葉）に入団し、選手として活躍していました。しかし、26歳の春、練習中に吐血し、検査の結果、原因不明の腎臓病であることが判明します。さらに詳しい検査の結果、当時国内でわずか13例しか報告されていなかった難病「グッドパスチャー症候群」と診断されました。この病は、発症から5年以内にほぼ全員が亡くなるという極めて予後不良な病気であり、治療のためには肺か腎臓の摘出が必要でした。肺を摘出すれば寝たきりの生活、腎臓を摘出すれば週3回の人工透析が必要となるという厳しい選択を迫られる中、木之本は家族の励ましを受け、腎臓の摘出と人工透析を受けることを決意します。

難病と闘いながらの社会復帰、そしてJリーグ創設へ

その後、木之本は古河電工の健保組合スタッフとして、人工透析のない日に限定して職場復帰を果たします。人工透析技術の向上により、体調が安定してきたこと、また古河電工側からの助言もあり、木之本はJSL事務局長に就任し、日本サッカー界の改革に乗り出します。木之本は、森健兒と共に、JSL活性化委員会の創設、Jリーグ設立に向けた活動を主導しました。Jリーグ発足後は理事、関連会社の社長などを歴任し、プロサッカーリーグの発展に尽力しました。

晩年と、病魔との再度の闘い

2002年、木之本はFIFAワールドカップ日本代表団長を務めましたが、大会期間中にバージャー病を発症。症状が悪化し、2007年には右足、2008年には左足を切断することになります。木之本は、「命を取るか、足を取るか」という医師の言葉に対し、苦渋の決断を迫られながらも、「足でお願いします」と答えたと言われています。2003年には、日本サッカー協会会長とJリーグチェアマンから解任されましたが、その後も株式会社エス・シー・エスの代表取締役、フクダ電子アリーナ名誉会長、アブレイズ千葉SC代表など、多岐にわたる活動を続けました。また、千葉大学と連携し、サッカーのマネジメントや地域連携に関する講義を行うなど、後進の育成にも尽力しました。

2017年1月15日、木之本はうっ血性心不全のため、千葉大学医学部附属病院でその生涯を閉じました。享年68歳。

木之本興三の功績と影響

木之本興三は、難病と闘いながらも、日本サッカー界の発展に大きな貢献を果たしました。Jリーグ創設に奔走した情熱、病魔に屈しない不屈の精神は、多くの人々に勇気と感動を与えました。木之本の人生は、NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』でも取り上げられ、その功績は今もなお語り継がれています。また、日本サッカー界だけでなく、多くの人々に勇気を与える存在として、その足跡は永遠に記憶されるでしょう。

参考資料

平塚晶人『空っぽのスタジアムからの挑戦－日本サッカーをメジャーにした男たち－』ISBN 4093664811
後藤健生『日本サッカー史・代表編 日本代表の85年』双葉社、2002年。ISBN 4-575-29489-6。
『日本サッカー狂会』国書刊行会、2007年。ISBN 978-4-336-04848-6。
木之本興三『日本サッカーに捧げた両足 真実のJリーグ創世記』ワニブックス、2013年。ISBN 4847091655。
木村元彦「[21年目の真実] Jリーグ創造記 森健兒、木之本興三の回想」『サッカー批評』第62号、2013年5月。

外部リンク

2002年4月23日放送－わが友へ 病床からのキックオフ
「木之本興三・jリーグへの遺言」
千葉大学講義
「ハートネットTV」未来へのアクション 第1回 逆境に負けず夢をかなえる
「ハートネットTV」出演者インタビュー 木之本興三さん「スポーツの力で夢をかなえる」

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