木崎良平 (歴史学者)

木崎良平

日本の西洋史学者であり、立正大学名誉教授。1924年11月17日生まれ。日露交渉史、特に江戸時代末期から明治初期にかけての日本とロシアとの関係史を主要な研究テーマとした。

経歴

1924年、大阪府守口市に生まれる。戦時中は兵役を経験し、終戦後、京都大学の西洋史学科で学び、卒業した。

大学卒業後、1951年に鹿児島大学文理学部の助教授として着任。研究者としてのキャリアをスタートさせた。1964年には、長年の研究成果として「『ルーシ』という語の意味に関する歴史的一考察」と題する論文を京都大学に提出し、文学博士号を取得した。翌1965年には鹿児島大学教養部の教授に昇任し、1971年からは教養部長も務めるなど、同学の発展に貢献した。

1976年、立正大学に教授として迎えられる。立正大学では主に文学部史学科で西洋史を講じ、後進の指導にあたった。1995年に定年を迎え、立正大学を退任し、名誉教授の称号を授与された。

研究内容

木崎良平氏の研究は、一貫してロシア史、特に日本とロシア間の交渉史に焦点が当てられていた。初期にはロシア・ソヴェトの歴史全体を概観する著作も執筆したが、その後の研究は日露関係史、中でも幕末期の漂流民の視点から描かれる歴史や、外交交渉の実態に深く切り込むものが多くなった。大黒屋光太夫や仙台漂流民と、ラクスマンやレザノフといったロシア側の人物との関わりを詳細に分析し、当時の両国の関係性を多角的に明らかにした。これらの研究は、閉ざされていたかに見える幕末日本の対外関係において、北方の隣国ロシアとの間にどのような交流や緊張が存在したのかを浮き彫りにする重要な貢献であった。

著作

木崎氏の主な著作は以下の通りである。

『ロシヤ・ソヴェトの歴史』（雄山閣、1959年） - ロシア・ソヴェト史の初期概説。
『ピーター大帝 ロシア帝制の確立』（清水書院、1971年） - ロシア近代化の礎を築いたピョートル大帝に関する評伝。
『漂流民とロシア 北の黒船に揺れた幕末日本』（中公新書、1991年） - 漂流民の視点から日露関係を描いた代表作。
『光太夫とラクスマン 幕末日露交渉史の一側面』（刀水書房、1992年） - 大黒屋光太夫の帰国交渉を詳細に分析。
『日露交渉史』（明玄書房、1993年） - 長年の研究を集大成した日露交渉史の通史。
『仙台漂民とレザノフ 幕末日露交渉史の一側面no.2』（刀水書房、1997年） - 仙台藩の漂流民とレザノフ来航の関連を論じた研究。

この他にも、『世界史新講』や『ロシア史随想』など、教育的な著作や随筆も発表している。また、井田好治氏との共編による『漂海紀聞』や、古稀を記念して編纂された論文集も存在する。

家族・親族

木崎氏の親族には、各分野で活躍した人物がいる。実兄の木崎国嘉氏は医師であり、大手前女子大学で教授を務めた。叔父の木崎正隆氏は、故郷である守口市の市長を務めた経歴を持つ。また、義父の後藤弘毅氏と義兄の山根銀五郎氏は、ともに鹿児島大学の名誉教授であった。

まとめ

木崎良平氏は、日本の西洋史学界において、日露交渉史研究の第一人者として多大な貢献をした。特に幕末期の日露関係に焦点を当てた実証的な研究は高く評価されており、その著作は現代でも多くの研究者に参照されている。鹿児島大学および立正大学で長年にわたり教鞭を執り、教育者としても多くの門下生を育てた。

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