ルーシ

ルーシについて

ルーシという用語は、歴史的に多くの側面を持つ言葉であり、主に民族名や国名、そして地名として使われてきました。この言葉は、特にスラヴ系の人々や彼らが住んでいた地域に密接に関連しています。

民族名のルーシ

ルーシという名は、いくつかの民族を指すことに使われてきました。まず、古代のスラヴ人がノルマン人に対して用いた「ルーシ族」という呼称があります。この名称の正確な意味や背景については、歴史的な議論が続いています。

また、「ルーシ人」という言葉は、キエフ・ルーシに住んでいた人々を指し、11世紀から20世紀半ばにかけてウクライナ人およびベラルーシ人の自称としても使われました。ラテン語では「ルテニア人」と呼ばれていました。さらに、現在のルシン人は自らを「ルーシ人」と名乗り、ルシン語を母語とする集団であります。

歴史的な国名としてのルーシ

ルーシは、また中世時代における重要な国名でもあります。特に「キエフ・ルーシ」という名称は、キエフ大公国の正式な国号であり、古代ロシアの基盤を成した国家の中心でした。このキエフ・ルーシは、リューリク朝に属する三つの公国、つまりキエフ大公国、チェルニーヒウ公国、ペレヤースラウ公国を中心に構成されていました。
広義には、他にもハールィチ・ヴォルィーニ大公国、ヴラジーミル大公国、ノヴゴロド共和国といった東欧の国々が「ルーシ」と関連づけられることがあります。

また、ルーシ・カガン国という国家名が存在し、これは8世紀後半から9世紀の半ばにかけて、現在のロシア北西部にあたる地域に設立されたと考えられています。これにより、ルーシという地名はロシア帝国やその後のロシア連邦にも関連します。

地名としてのルーシ

ルーシの名称は、歴史的な地域名としても使われました。元々は現代の北ウクライナのキーウ、チェルニーヒウ、ペレヤスラウを中心とした地域を指します。これが「キエフ・ルーシ」と呼ばれる本土の範囲です。キエフ・ルーシが衰退した後も、ルーシ人や東スラヴ人が居住する広域は「ルーシ」と呼ばれました。

「小ルーシ」は、文明の中心地アテネからの距離が近いことに由来し、現在のウクライナの北部・中部を指します。対照的に「大ルーシ」は、アテネからの距離が遠いことを意味し、主に現在のロシア地域を指します。さらに、黒ルーシや白ルーシ、紅ルーシといった地名も存在し、東欧の各地域における文化的・歴史的な意義を反映しています。

現代における「ルーシ」

「ルーシ」という概念は、ウクライナやベラルーシ、ロシアの人々にとって祖国や文化の象徴として重要です。特に、「キエフ・ルーシ」は歴史研究において中心的な役割を果たしており、ルーシ・ウクライナという言葉は近代の歴史観において重要な意味を持っています。古ルーシ語やルーシ語は、キエフ大公国の文語としてそれぞれの歴史的背景を考察する上で欠かせない存在です。

このように、ルーシはその歴史的背景や民族、国名、地名により、多面的な意味を有する重要な語であることが分かります。

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