木挽

木挽について

木挽（こびき）もしくは木挽きは、木材を大鋸（おが）を用いて切り出し加工する技術及びその作業に従事する専門職群を指します。この職業は、古典的な職人の一部として重要な役割を果たしてきました。木挽はまた、大鋸挽（おがひき）としても知られ、特に優れた木材の鑑定能力を持つ職人集団です。

歴史の流れ

奈良時代（8世紀）には、木材を供給する必要があった国や寺社が、特定の山林を「杣」として指定し、その中から木材を切り出す杣工や木挽が現れました。この時期の木挽の出現は、建築や修理において木材が必要不可欠であったことに起因しています。

14世紀から15世紀にかけて、室町時代に中国から大鋸が導入され、これにより生産性が飛躍的に向上しました。この大鋸は長さ約2メートルを持ち、通常は2人がかりで作業を行い、木材を縦に切り出す方式が採用されました。それ以前ののこぎりは横挽き型であったため、この技術革新は作業に大きな影響を与えました。

15世紀末、1494年に編纂された『三十二番職人歌合』では、木挽が「大のこひき」として描かれており、その作業の様子が詩として詠まれています。「杣板は世に出でながら哀れ身の おがひきこもる山住ぞうき」のように、木材が流通する中で木挽自身が山に隠れざるを得ない心境が歌われています。これにより「木挽」は、手工業者を意味する新たな職人のカテゴリーとして位置付けられるようになりました。

江戸時代の木挽

江戸時代初期には、江戸城の建設に伴い、木挽たちが居住する地域が形成されました。その地域は「木挽町」と名付けられ、現在の東京都中央区銀座に位置しています。この名称は1951年まで使用されていました。17世紀初頭には、大鋸にも革新が見られ、「前挽き大鋸」が開発され、これにより個々の木挽が一人で作業を行うことが可能となりました。

19世紀初頭、鍬形蕙斎の『近世職人尽絵巻』や葛飾北斎の『富嶽三十六景』に描かれる木挽は、当時の木挽たちの仕事の様子を示しており、特に「前挽き大鋸」を使った作業が特色です。

近代以降の木挽

明治時代以降、機械による製材が広がる中でも、伝統的な製材技術を持つ木挽の職業は継承され続けました。現在でも、東京都中央区銀座の旧木挽町地域には、足柄木材や大西材木店などが材木商を営んでおり、地域の歴史を象徴しています。

地名と木挽

日本各地には「木挽」「大鋸」という名称が見受けられます。東京都の木挽町や北海道の木挽山、岡崎市の木挽町通など、これらの地名は歴史的な背景を反映しています。

木挽は、ただの職業でなく、長い歴史の中で培われた技術と文化の象徴として、今なおその価値を保ち続けています。この伝統的な技術の理解を深めることは、日本の職人文化を知る上でも大切です。

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