木曽ぶし三度笠

1960年12月10日に、橋幸夫の通算5枚目のシングルとしてリリースされたのが「木曽ぶし三度笠」（品番：VS-455）です。この楽曲は、同年に制作された映画の主題歌としても広く知られています。

橋幸夫は、1960年7月のデビュー曲「潮来笠」で大きな注目を集めました。この年だけで実に5枚のシングルを発表するという精力的な活動を展開しましたが、中でも10月には「おけさ唄えば」、11月には「喧嘩富士」、そして12月に本作と、新人の作品としては極めて異例となる3ヶ月連続でのシングルリリースを実現しています。このようなハイペースな新曲発表の背景には、発表する楽曲が次々とヒット賞を獲得し続け、その人気が急速に高まったこと、そしてビクターの興業部門が早々に彼のワンマンショーの開催を決定し、それに必要な楽曲を急ぎ揃える必要があったことなど、当時の熱狂的な状況がありました。

本作も、橋幸夫の初期ヒット曲を手がけた名コンビ、佐伯孝夫が作詞、吉田正が作曲・編曲を担当しています。歌詞には、日本の代表的な民謡の一つである「木曽のなー、仲乗りさん、木曽の御嶽山....」で始まる木曽節が効果的に挿入されており、これが楽曲に独特の風味を与えています。この民謡を取り入れた歌謡曲というスタイルは、かつて佐渡おけさを織り込んだ「おけさ唄えば」が多くの民謡ファンから好評を得たように、本作もまた幅広い層に受け入れられる要因となりました。数ある橋幸夫の股旅歌謡の中でも特に人気が高く、後年のコンパクト盤などにも頻繁に再収録されています。

楽曲の踊りの振付けは、楳茂都梅延が手がけました。また、橋幸夫自身も、1975年に開催された第26回NHK紅白歌合戦でこの「木曽ぶし三度笠」を披露しています。シングルのB面には「新三ひとり旅」が収録されており、こちらも作詞は佐伯孝夫、作曲は吉田正による作品です。この「新三ひとり旅」も、本作と同じく映画「木曽ぶし三度笠」の主題歌として使用されました。なお、「新三ひとり旅」のCD音源は、2005年に発売された芸能生活45周年記念盤『歌の架け橋』に収録されています。

本作は発売翌年の1961年に年間で27万枚を売り上げる大ヒットを記録し、ビクターレコードの年間ヒット賞を受賞しています。

楽曲のヒットを受け、本作を主題歌とする同名映画『木曽ぶし三度笠』が大映京都により製作されました。1961年3月1日に公開されたこの作品は、小林勝彦が主人公の中乗り新三を演じ、歌手の橋幸夫も飛脚参平役として出演しています。物語は、渡世人である中乗り新三が面倒な騒動に巻き込まれるものの、偶然通りかかった飛脚参平の機転によって窮地を脱するというもので、歌謡曲をフィーチャーした痛快な股旅アクションとして描かれました。主なスタッフとしては、企画に浅井昭三郎、脚本に犬塚稔、監督に加戸敏、製作に武田一義などが名を連ねています。出演者は、主演の小林勝彦、橋幸夫のほか、三田村元、井上明子、山本弘子といった面々が出演しています。

「木曽ぶし三度笠」は、橋幸夫の代表曲として、彼の数多くのベストアルバムや全曲集に収録されています。例えば、『橋幸夫／全曲集』（1989年）、『橋幸夫／豪華版全曲集』（1992年）、『颯爽!橋幸夫 股旅名曲集』（1972年LP、2005年復刻CD）など、時代を超えて様々な形で親しまれ続けています。

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