木曾材木奉行所

木曾材木奉行所

木曾材木奉行所（きそざいもくぶぎょうしょ）は、江戸時代に尾張藩が木曽地域で伐採された材木を統括するために設けた機関です。長野県木曽郡上松町の原畑に位置し、上松材木役所や上松御陣屋などとも称されました。

歴史的背景

木曾代官を由来とする山村甚兵衛家は、戦国時代の名将・山村良勝の家系です。良勝は関ヶ原の戦いでの功績により、木曾代官の地位を授かり、江戸幕府により木曽川の管理を任されました。これにより、山村家には木曾谷の森林の伐採と利用を管理する権利が与えられました。さらに、彼らは特権として与えられた木材を利用し、木曽の村々からの貢物を受け取っていました。

奉行所の設置経緯

江戸時代が進むにつれ、木材の需要増加が全国的な森林減少を引き起こしました。特に木曽地区での乱伐が問題視され、寛文4年（1664年）には尾張藩が木曽へ視察を行い、乱伐の実態を把握しました。この結果、藩は木曾代官に与えられていた伐木の統制権を取り上げ、尾張藩の直轄事業に移行する改革を実施。その一環として上松材木役所が設置されました。

尾張藩の林政改革

尾張藩による改革では、山村家が持っていた権利が大幅に制限され、より厳格な管理体制が構築されました。たとえば、与えられていた原木の量を減少させ、新たに留山制度を導入しました。この新体制は、木曽谷の資源を保護するための重要な政策とされましたが、地元の住民にとっては生活の制約を伴う厳しいものでした。

上松材木役所と奉行所

後に上松材木役所は、尾張藩直轄の管理機関として機能し、初代奉行には佐藤半太夫が任命されました。彼を含む奉行たちは木材の伐採や運搬を監視し、地元村民を管理しました。

この執行機関は米納に関する年貢制度も兼ねており、木曽における米と雑穀の調達を行っていました。特に水田が限られた地域では、雑穀が主に納められていました。年貢の収集は厳格に行われ、農民たちにとっては大きな負担となりました。

奉行所の施設構造

元文5年（1740年）、奉行所は新たな建設を経て木曾材木奉行所と改称されました。この施設は、広大な敷地に建設され、奉行屋敷や庁舎、さらには警察機能を持つ同心などが整えられていました。建物は地域の特性を生かした構造で、樹木に囲まれ、尾張藩の威厳を示す装飾も施されていました。

森林保護策の強化

尾張藩は木曽の森林資源を保護するため、伐木制限を厳格に施行しました。特に、ヒノキやサワラなど特定の木材については伐採が禁止され、これに違反した者には厳罰が科されました。このようにして、木曾谷の環境保全と資源管理が徹底されました。

結論

木曾材木奉行所の設立は、江戸時代の林業政策の重要な一環であり、地域資源の持続可能な管理を模索した結果の一つです。その活動は、見える形で木曽地域の文化と経済に影響を与え、現在でもその仕組みや歴史が地域の人々に記憶されています。

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