木本正次

木本正次：ジャーナリストの視点を持つ作家

木本正次（きもと しょうじ）は、1912年10月5日に徳島県海部郡牟岐町で生まれ、1995年1月26日に82歳で亡くなった日本の小説家です。彼は毎日新聞の元編集委員という経歴を持ち、新聞記者としての経験を活かした作品を数多く発表しました。

新聞記者から小説家へ

神宮皇學館（現在の皇學館大学）を卒業後、木本は毎日新聞に入社し、記者としてのキャリアをスタートさせました。記者時代には、様々な事件や出来事の現場を取材し、その経験が彼の作品に深いリアリティを与えました。毎日新聞では、中部本社報道部長、西部本社ラジオ報道部長、大阪本社整理部顧問などを歴任し、東京本社と大阪本社では出版局参与を務めました。

新聞記者としての活動と並行して、木本は小説家としての道を歩み始めました。1960年には、『刀塚』が直木賞候補となるなど、その才能は早くから認められていました。

代表作『黒部の太陽』

木本の代表作として知られる『黒部の太陽』は、1964年に毎日新聞の連載小説として発表されました。この作品は、黒部ダム建設という国家プロジェクトに挑む人々の姿を描いたもので、三船敏郎と石原裕次郎の主演で映画化され、大きな反響を呼びました。また、鹿島臨海工業地帯の成立を描いた『砂の十字架』も、石原裕次郎主演で『甦える大地』として映画化されています。

作家としての独立

1967年に毎日新聞社を定年退職した後、木本は作家としての活動に専念し、ノンフィクション分野で企業と人間のかかわりを題材にした作品を次々と発表しました。彼の作品は、企業の歴史や社会貢献、そこで働く人々のドラマを描き出し、多くの読者に感動を与えました。

主な著書

『海女と一億円』（1960年）
『泣女〜なきめ』（1961年）
『黒部の太陽 日本人の記録』（1964年）
『香港の水』（1967年）
『反逆の走路〜小説 豊田喜一郎』（1968年）
『東京地底』（1969年）
『砂の十字架〜鹿島人工港ノート』（1970年）
『四阪島〜公害とその克服の人間記録』（1971年）
『少年平賀源内』（1972年）
『東への鉄路〜近鉄創世紀』（1974年）
『砂からの門〜鹿島開発史ノート』（1975年）
『熱球爆走す』（1977年）
『黒潮の碑文』（1978年）
『夜明けへの挑戦〜豊田喜一郎伝』（1979年）
『燃える男の肖像』（1981年）
『小説出光佐三〜燃える男の肖像』（1982年）
『出光佐三語録〜気骨の経営者』（1983年）
『騎手・福永洋一「奇跡への挑戦」』（1985年）
『トヨタの経営精神―語り継ぐ経営一〇〇年』（1985年）
『伊庭貞剛物語〜住友近代化の柱』（1986年）
* 『別子銅山中興の祖 伊庭貞剛物語』（1999年）

木本正次の作品は、新聞記者としての経験と、人間に対する深い洞察力によって生まれました。彼の作品は、社会の光と影を描き出し、読者に深い感動と示唆を与え続けています。

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