木村素衛

木村素衛（きむら もともり）は、1895年に石川県で生まれ、1946年に生涯を閉じた哲学者・教育学者です。京都帝国大学哲学科選科を卒業後、広島高等師範学校教授、そして京都帝国大学教授として教鞭を執りました。

研究内容と業績

木村素衛は、京都学派の一翼を形成し、教育学の哲学的基礎づけに大きな貢献をしました。彼の研究は、特にフィヒテ哲学に深く根ざしており、学位論文『実践的存在の基礎構造 教育哲学の考察に向けられたるフイヒテ哲学の一つの研究』は、彼の研究における重要な成果の一つです。この論文で彼は文学博士号を取得しています。

教育者、社会事業家との交流も深く、戦後近江学園を創設した池田太郎、糸賀一雄らに思想的な影響を与えたことが知られています。彼の思想は、教育の現場だけでなく、社会福祉の分野にも広がっていきました。

著書

木村素衛は、生涯にわたり多くの著作を残しました。以下に主な著書を列挙します。

『フィヒテ』弘文堂書房 (西哲叢書) 1937
『フィヒテ第七章』弘文堂 1937
『国民と教養』弘文堂（教養文庫）1939
『表現愛』岩波書店 1939
『独逸観念論の研究』弘文堂 1940
『形成的自覚』弘文堂 1941
『国民教育の根本問題』目黒書店（教学新書）1941
『美のかたち』岩波書店 1941
『草刈籠』弘文堂 1942
『日本文化発展のかたちについて』生活社（日本叢書）1945
『教育学の根本問題』黎明書房（精神科学選書）1947
『雪解 随筆集』能楽書林 1947
『教育と人間』弘文堂 1948
『花と死と運命』弘文堂（アテネ文庫）1948
『国家に於ける文化と教育』岩波書店 1948
『紅い実と青い実』弘文堂（アテネ文庫）1949
『魂の静かなる時に』弘文堂 1950
『ミケルアンヂェロ』弘文堂（アテネ文庫）1950
『表現愛と教育愛』木村素衛先生論文集刊行会 1966

これらの著作を通して、木村素衛は教育、哲学、文化、美など、多岐にわたるテーマを探求し、読者に深い洞察を与えました。没後も、彼の著作は復刊され、現代においてもその思想は読み継がれています。

参考文献

木村素衛の研究に関する参考文献として、以下の書籍が挙げられます。

大西正倫『表現的生命の教育哲学―木村素衞の教育思想』（2011、昭和堂）
門前斐紀『木村素衞「表現愛」の人間学―「表現」「形成」「作ること」の身体論』（2019、ミネルヴァ書房）
蜂谷俊隆「糸賀一雄と木村素衛──教養の思想を中心に」『福祉にとっての歴史　歴史にとっての福祉』（2017、ミネルヴァ書房）

これらの文献は、木村素衛の思想や業績をより深く理解するための手がかりとなるでしょう。

木村素衛は、教育学の分野において独自の足跡を残し、多くの人々に影響を与えた重要な人物です。彼の思想は、現代の教育や社会においてもなお、重要な示唆を与えてくれます。

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