木村英紀

木村英紀氏は、1941年生まれの日本の工学者です。東京大学で工学博士号を取得後、大阪大学、東京大学で教鞭をとり、制御理論、システム科学、生物制御の分野で顕著な功績を残しました。

その研究内容は多岐に渡り、特に制御工学における貢献は高く評価されています。2011年には、国際自動制御連合（IFAC）からGiorgio Quazza Medalをアジア人として初めて受賞。これは制御工学における最高の賞の一つであり、氏の国際的な地位を確固たるものにしました。さらに2021年には、アメリカ電気電子学会（IEEE）よりIEEE Control Systems Awardを受賞。これも制御分野における最高の栄誉の一つであり、アジア人初受賞という快挙を達成しました。これらの受賞は、氏の研究が世界的に高く評価されている証です。

大学での教職経験に加え、木村氏は理化学研究所や科学技術振興機構などでも研究活動を続けました。理化学研究所バイオメディカル制御センターチームリーダー、理研 BSI-Toyota 連携センターセンター長などを歴任し、幅広い分野での指導的役割を担ってきました。現在は、一般社団法人システムイノベーションセンター副センター長として、日本の科学技術の発展に貢献しています。

学会活動も非常に盛んで、計測自動制御学会会長、日本学術会議会員、アジア制御協会初代会長などを歴任。国際的な学会であるIFACのCouncilメンバーも務め、国際的な制御工学コミュニティに大きな影響を与えました。これらの活動を通して、日本の制御工学の発展に大きく貢献しました。Automatica Paper Prize Awardを2回、IEEE-CSS Outstanding Paper Awardなど、数々の国内外の賞を受賞しており、その研究成果の質の高さが伺えます。

また、木村氏は学術論文だけでなく、一般向け書籍の執筆にも積極的に取り組んできました。代表的な著書として、『制御工学の考え方』、『ものつくり敗戦』などがあり、一般の人々にも分かりやすく、制御工学の重要性や日本のものづくりについての問題点を提起しています。これらの著作は、幅広い読者に大きな影響を与え、日本の科学技術に対する理解を深めることに貢献しました。

木村英紀氏の業績は、単なる研究成果にとどまりません。数々の受賞歴、指導者としての経験、そして一般書執筆を通して、日本の科学技術の発展に多大な貢献を果たしてきました。その功績は、今後の日本の科学技術界にも大きな影響を与えるでしょう。

以下に、木村英紀氏の主な著書をリストアップします。

単著

『動的システムの理論』（産業図書）
『ディジタル信号処理と制御』（昭晃堂）
『PC-9801制御系設計プログラミング』（日刊工業新聞社）
Chain-Scattering Approach to H∞-Control (Birkhaeuser)
『H∞制御』（コロナ社）
『制御工学の考え方―産業革命は「制御」からはじまった』（講談社）
『岩波講座 物理の世界 制御する〈1〉回路とシステム』（岩波書店）
『線形代数―数理科学の基礎』（東京大学出版会）
『「制御理論講義」体系的理解のために』（サイエンス社）
『フーリエ‐ラプラス解析』（岩波書店）
『ものつくり敗戦―「匠の呪縛」が日本を衰退させる』（日本経済新聞出版社）
『世界を動かす技術思考 要素からシステムへ』（講談社）
『現代システム科学概論』（東京大学出版会）

共著

『線形制御系の設計理論』（計測自動制御学会）
『ロバスト制御』（コロナ社）
『制御系設計理論とCADツール』（コロナ社）
* 『岩波講座 応用数学〈14〉Fourier‐Laplace解析 漸近解析―方法(4・5) 』（岩波書店）

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