木田詩子

木田 詩子（きだ うたこ）は、1967年1月23日に誕生した日本の彫刻家です。埼玉県新座市で四人きょうだいの次女として育ち、若い頃は音楽家・内藤慎也とユニット「largo」を組んで音楽活動に携わっていました。

彼女の芸術への道は、名古屋で偶然目にしたサモトラケのニケ像（レプリカ）との出会いによって決定づけられます。人間の創造力が生み出す計り知れない美しさと、それを追求する精神性に深い感動を覚え、自らもその高みを目指したいという情熱から、彫刻の世界へと足を踏み入れました。

彫刻の学びは、主に北区文化振興財団が運営する北村西望の元アトリエでの塑像・人体研究から始まりました。その後は、ひたすら独学で技を磨き、制作方法を含めて独自の芸術世界を築き上げています。現在は日本美術家連盟の会員であり、菜食主義者としても知られています。

木田詩子の作品は、その静謐かつ精神性の高い表現が評価され、多くの場所で目にすることができます。美術館や公共施設に収蔵されていることが多く、例えば、鹿児島県の与論島ミコノス通りにはブロンズ像「千年の樹」が、東京バレエ団には斎藤友佳理氏のトゥシューズをモチーフにした「ユカリューシャ」が、また北海道の中札内村文化創造センターや神田日勝記念美術館、奈良県の新薬師寺、石川県の西田幾多郎記念哲学館など、全国の重要な場所に作品が収蔵・展示されています。

活動の中心となる展覧会も多岐にわたります。2007年から日彫展、2008年からは日展に出品し、注目を集めました。北彫展や現代美術展などの公募展にも参加し、石川県立美術館や金沢21世紀美術館などで作品を発表しています。また、西田幾多郎記念哲学館や神田日勝記念美術館での主催展、三越日本橋本店や仙台三越での特集展示、各地のギャラリーでの個展やグループ展を精力的に開催しています。近年では、国立新美術館での受賞作家展や、京都での「海の夢展」（2021年）などがあります。

彫刻作品は美術の枠を超えて、出版物にも頻繁に採用されています。月刊誌「現代短歌」では、2016年12月号から1年間にわたり表紙作品として使用され、多くの短歌愛好家の目に触れました。また、歌人・小田鮎子氏の歌集「海、または迷路」（2019年）の表紙にも採用されています。2016年には自身の作品集も発刊しました。

数々の受賞歴も、彫刻家としての確かな実力を示しています。2020年には紺綬褒章を受章しました。主要な彫刻展での評価も高く、2016年の第14回NAU21世紀美術連立展での奨励賞、2010年には日展で北國新聞社奨励賞を、日彫展で日彫賞を受賞し、日彫会員に推挙されています。また、2010年の現代美術展での北國賞、2008年の北陸日彫会賞、北区美術展での連続受賞（2007年、2008年）など、活動初期から高い評価を得ています。

音楽から彫刻への転身というユニークな経歴と、古典芸術への敬意、そして自己の内面への深い探求から生み出される木田詩子の彫刻作品は、静寂の中に力強い生命力と精神性を宿しています。公共空間や美術館、そして出版物を通して、彼女の創造する美は広がり続け、多くの人々に静かな感動を与えています。

もう一度検索