木藤茂

木藤茂（もくどう しげる）

木藤茂（1901年11月11日 - 1983年3月31日）は、日本の映画監督、脚本家であり、かつては俳優としても活動していました。本名は松本房雄といいます。映画史において、彼は溝口健二監督の初期作品『ふるさとの歌』に主演した俳優として、また溝口に師事し監督へ転身した人物として知られています。

生涯

1901年（明治34年）11月11日、東京府東京市本所区入江町（現在の東京都墨田区緑）に生まれました。幼少期から演劇の世界に足を踏み入れ、12歳で初舞台を踏みます。初期には女形として新派劇団に参加し、東京近郊を巡業しました。

映画界へは、1915年（大正4年）に日活向島撮影所にてエキストラとしてデビュー。その後、数々の作品に出演し、1919年（大正8年）には正式に日活に入社。「子役・女形」として活動しました。

1922年（大正11年）の『京屋襟店』、1923年（大正12年）の溝口健二監督作品『愛に甦る日』への出演を機に、その才能を開花させます。しかし、1923年（大正12年）の関東大震災により日活向島撮影所が壊滅。日活京都撮影所へ異動し、現代劇を手がける第二部で活動しました。1925年（大正14年）には、自ら脚本を手がけた『貧者の勝利』が映画化されています。

1927年（昭和2年）、木藤は演出部へ転向。溝口健二や阿部豊に師事し、演出助手として経験を積みました。そして、村田実の推薦により監督部へ異動し、同年『A38号室』で映画監督としてデビューを果たします。1933年（昭和8年）には、本名名義で監督した『恋すればこそ』を最後に日活を離れました。

4年のブランクを経て、新興キネマ京都撮影所に入社。1937年（昭和12年）にトーキー作品『佐賀怪猫伝』を監督し、見事な復活を遂げました。その後は時代劇を中心に監督し、『いろは仮名 四谷怪談』など、鈴木澄子主演の作品を多く手がけました。しかし、1941年（昭和16年）の『紅葉狩』以降、映画監督としての記録は見当たらなくなります。

戦時中の1944年（昭和19年）には、新興新派の公演で演出を担当した記録が残っています。

晩年は、東京都小平市花小金井南町で静かに暮らし、1983年（昭和58年）3月31日に老衰のため自宅で亡くなりました。81歳でした。

フィルモグラフィ

木藤茂は、俳優として、そして監督として、数多くの作品に携わりました。以下に、彼の主なフィルモグラフィをまとめます。

日活向島撮影所（出演）

『瀧の白糸』（1915年）
『京屋襟店』（1922年）
『愛に甦る日』（1923年）

日活京都撮影所第二部（出演）

『ふるさとの歌』（1925年）

日活大将軍撮影所（出演・監督）

『A38号室』（1927年、監督デビュー作）

日活太秦撮影所（監督）

『爆弾三勇士』（1932年）
『恋すればこそ』（1933年）

新興キネマ京都撮影所（監督）

『佐賀怪猫伝』（1937年）
『いろは仮名 四谷怪談』（1937年）
『怪談鴛鴦帳』（1938年）
『紅葉狩』（1941年）

参考文献

『現代俳優名鑑』（揚幕社、1923年）
* 『日本映画俳優全集・男優編』（キネマ旬報社、1979年）

木藤茂は、俳優として、そして映画監督として、日本映画史にその名を刻んだ人物です。彼の作品は、時代を超えて、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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