新興キネマ

新興キネマ株式会社について

新興キネマ株式会社（しんこうキネマ）は、1931年に設立された日本の映画制作会社です。設立の背景には、帝国キネマ演芸からの改組があり、当社はその後、映画制作と配給を通じて日本の映画業界に大きな影響を及ぼしました。

設立と初期の事業

新興キネマは、1931年8月28日に東京の八丁堀に本社を構え、営業を開始しました。設立時には、京都の帝国キネマ太秦撮影所を引き継ぎ、新興キネマ京都太秦撮影所として活用し、豊島園にあった不二スタジオや阪東妻三郎プロダクションの遊園地を利用して映画製作が行われました。最初に配給した映画は、浅草・常盤座で公開された『風雲長門城』で、同社自身が製作した作品は『何が彼女を殺したか』でした。

撮影所の発展

1934年には東京の大泉に「新興キネマ東京撮影所」を新設し、太秦から現代劇部を分離したことで、更なる映画制作の体制が整いました。東京撮影所が初めて製作・公開した作品は『唐人お吉』で、映画製作における新興キネマの地位を強固なものにしました。

関与した著名な人物たち

会社の設立には白井信太郎や大谷竹次郎が関与し、白井は京都撮影所長から社長に就任しました。また、監督やスタッフには伊丹万作や溝口健二、新藤兼人などの有名な映画人が在籍していました。俳優陣には、片岡千恵蔵、市川右太衛門、大友柳太朗など、多彩な顔ぶれが揃い、彼らの活躍は新興キネマの作品を支える要素でした。

労働組合の活動と戦時中の影響

1937年には、直営の浅草電気館や麻布新興館で労働組合が設立され、従業員の給料増や手当の復活を求めて交渉が行われた記録があります。労働環境の改善に向けた動きは、新興キネマにとっても重要な転機となりました。一方で、日中戦争の影響で洋画の輸入が制限され、邦画での代替が困難になり、苦肉の策として次第に演芸を取り入れるようになりました。このことから、演芸部を新設し、吉本興業から人気芸人を引き抜くこととなります。

合併と消滅

1942年、戦時統合により新興キネマは日活や大都映画と合併し、大日本映画製作株式会社（現在の大映）となりました。この合併により新興キネマは消滅を迎え、設立から約11年の歴史にピリオドを打ちました。合併時には、制作施設や映画館も引き継がれる形となり、会社の遺産は大映として引き継がれましたが、徐々に制作本数は減少することになります。

新興キネマの活動は、日本映画界に多大な影響を与えた一時代を築きました。数々の作品と共に、映画人たちの挑戦と成長は、今なお映画史の中で重要な位置を占めています。

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