木部暢子
木部暢子氏は、日本の方言学分野における第一人者の一人です。1955年に福岡県に生まれ、長年にわたり日本の各地域に根差した言語研究、特に方言の多様性とその体系の解明に貢献してきました。現在は人間文化研究機構長という要職にあり、日本の学術研究全体を牽引する立場にあります。
その学術的なキャリアは、1978年に九州大学文学部文学科国語国文科を卒業したことに始まります。さらに専門性を深めるため、同大学院文学研究科に進学し、1980年に修士課程を修了しました。大学院での学びを通して、方言という地域に固有の言葉の仕組みに強い関心を抱き、研究の道を志しました。
教育者としてのキャリアも長く、大学院修了後は純真女子短期大学で助手を務め、後に講師に昇進しました。その後、福岡女学院短期大学を経て、1988年には鹿児島大学法文学部に助教授として着任しました。鹿児島という南九州の中心地は、木部氏の主要な研究対象である方言の豊かな宝庫であり、この地で精力的なフィールドワークと研究活動を展開しました。1999年には同大学の教授に昇任し、2006年から2010年にかけては法文学部長として学部の運営にも携わりました。
研究成果は着実に実を結び、1998年には「西南部九州方言アクセントの研究」で九州大学より文学博士の学位を取得しました。この博士論文は、複雑な様相を示す南九州の方言アクセント体系を体系的に分析し、その特徴を明らかにした重要な業績です。
2010年には、日本の言語研究をリードする国立国語研究所の教授に就任しました。ここでは、これまでの地域に根差した研究で培った知見を活かしつつ、より全国的な視点からの言語研究に貢献しました。2021年からは同研究所の特任教授として、引き続き研究活動や後進の指導にあたっています。
そして2022年、日本の人文科学系研究機関を束ねる人間文化研究機構の機構長に就任しました。これは、木部氏の研究者としての卓越した業績と、学術行政における手腕が高く評価された結果と言えます。
木部氏の研究の中心は、方言のアクセントと音韻です。特に、南九州地方の多様な方言におけるアクセント体系の地域差や歴史的変化に焦点を当て、詳細な調査と分析を進めてきました。方言の音韻構造に関する研究も行っており、それぞれの地域でことばがどのように発音され、変化してきたのかを丹念に調べています。また、急速に失われつつある方言の危機的な状況に早くから警鐘を鳴らし、貴重な言語資源である方言を次世代に伝えるための記録・保存活動にも力を入れています。地域の方々との協力を得ながら、方言の音声資料や文法・語彙に関する資料を収集・整理し、データベース化するなど、実践的な取り組みを進めています。
これらの長年の研究活動の成果は、多くの重要な著作として発表されています。代表的な著書としては、博士論文の内容をまとめた『西南部九州二型アクセントの研究』（勉誠出版、2000年）や、一般読者にも方言の面白さを分かりやすく伝えることを意図した『じゃっで方言なおもしとか そうだったんだ!日本語』（岩波書店、2013年）があります。
また、多数の共著や編著も刊行しており、方言学の専門家や研究者、学生にとって不可欠な基礎資料や研究書を提供しています。以下に主なものを挙げます。
『方言をしらべよう 郷土の研究 8 九州地方』（指導、福武書店、1990年）
『方言の形成』（小林隆,高橋顕志,安部清哉,熊谷康雄共著、岩波書店、2008年）
『日本語アクセント入門』（松森晶子,新田哲夫,中井幸比古共編著、三省堂、2012年）
『アジアの人びとの自然観をたどる』（小松和彦,佐藤洋一郎共編、勉誠出版、2013年）
『方言学入門』（竹田晃子,田中ゆかり,日高水穂,三井はるみ共編著、三省堂、2013年）
『災害に学ぶ 文化資源の保全と再生』（編、勉誠出版、2015年）
『音韻史 (シリーズ日本語史 1)』（高山倫明,松森晶子,早田輝洋,前田広幸共著、岩波書店、2016年）
『はじめて学ぶ方言学 ことばの多様性をとらえる28章』（井上史雄共編著、ミネルヴァ書房、2016年）
『鹿児島県甑島方言からみる文法の諸相』（窪薗晴夫,高木千恵共編、くろしお出版、2019年）
『明解方言学辞典』（編、三省堂、2019年）
『フィールドと文献からみる日琉諸語の系統と歴史』（林由華,衣畑智秀共編、開拓社、2021年）
『日本語の格表現』（竹内史郎,下地理則共編、くろしお出版、2022年）
特に『明解方言学辞典』は、方言学分野における標準的な辞典として広く利用されており、木部氏の編纂者としての手腕を示す一冊と言えます。
木部暢子氏は、教育・研究・学術行政の三方面から、日本の方言研究と日本語学の発展に多大な貢献を果たしてきました。その研究は方言の個別具体的な記述にとどまらず、日本語全体の歴史や構造を理解する上でも重要な示唆を与えています。人間文化研究機構長として、人文科学分野の未来を切り拓くリーダーシップも発揮しており、今後の活動にも期待が寄せられています。
その学術的なキャリアは、1978年に九州大学文学部文学科国語国文科を卒業したことに始まります。さらに専門性を深めるため、同大学院文学研究科に進学し、1980年に修士課程を修了しました。大学院での学びを通して、方言という地域に固有の言葉の仕組みに強い関心を抱き、研究の道を志しました。
教育者としてのキャリアも長く、大学院修了後は純真女子短期大学で助手を務め、後に講師に昇進しました。その後、福岡女学院短期大学を経て、1988年には鹿児島大学法文学部に助教授として着任しました。鹿児島という南九州の中心地は、木部氏の主要な研究対象である方言の豊かな宝庫であり、この地で精力的なフィールドワークと研究活動を展開しました。1999年には同大学の教授に昇任し、2006年から2010年にかけては法文学部長として学部の運営にも携わりました。
研究成果は着実に実を結び、1998年には「西南部九州方言アクセントの研究」で九州大学より文学博士の学位を取得しました。この博士論文は、複雑な様相を示す南九州の方言アクセント体系を体系的に分析し、その特徴を明らかにした重要な業績です。
2010年には、日本の言語研究をリードする国立国語研究所の教授に就任しました。ここでは、これまでの地域に根差した研究で培った知見を活かしつつ、より全国的な視点からの言語研究に貢献しました。2021年からは同研究所の特任教授として、引き続き研究活動や後進の指導にあたっています。
そして2022年、日本の人文科学系研究機関を束ねる人間文化研究機構の機構長に就任しました。これは、木部氏の研究者としての卓越した業績と、学術行政における手腕が高く評価された結果と言えます。
木部氏の研究の中心は、方言のアクセントと音韻です。特に、南九州地方の多様な方言におけるアクセント体系の地域差や歴史的変化に焦点を当て、詳細な調査と分析を進めてきました。方言の音韻構造に関する研究も行っており、それぞれの地域でことばがどのように発音され、変化してきたのかを丹念に調べています。また、急速に失われつつある方言の危機的な状況に早くから警鐘を鳴らし、貴重な言語資源である方言を次世代に伝えるための記録・保存活動にも力を入れています。地域の方々との協力を得ながら、方言の音声資料や文法・語彙に関する資料を収集・整理し、データベース化するなど、実践的な取り組みを進めています。
これらの長年の研究活動の成果は、多くの重要な著作として発表されています。代表的な著書としては、博士論文の内容をまとめた『西南部九州二型アクセントの研究』（勉誠出版、2000年）や、一般読者にも方言の面白さを分かりやすく伝えることを意図した『じゃっで方言なおもしとか そうだったんだ!日本語』（岩波書店、2013年）があります。
また、多数の共著や編著も刊行しており、方言学の専門家や研究者、学生にとって不可欠な基礎資料や研究書を提供しています。以下に主なものを挙げます。
『方言をしらべよう 郷土の研究 8 九州地方』（指導、福武書店、1990年）
『方言の形成』（小林隆,高橋顕志,安部清哉,熊谷康雄共著、岩波書店、2008年）
『日本語アクセント入門』（松森晶子,新田哲夫,中井幸比古共編著、三省堂、2012年）
『アジアの人びとの自然観をたどる』（小松和彦,佐藤洋一郎共編、勉誠出版、2013年）
『方言学入門』（竹田晃子,田中ゆかり,日高水穂,三井はるみ共編著、三省堂、2013年）
『災害に学ぶ 文化資源の保全と再生』（編、勉誠出版、2015年）
『音韻史 (シリーズ日本語史 1)』（高山倫明,松森晶子,早田輝洋,前田広幸共著、岩波書店、2016年）
『はじめて学ぶ方言学 ことばの多様性をとらえる28章』（井上史雄共編著、ミネルヴァ書房、2016年）
『鹿児島県甑島方言からみる文法の諸相』（窪薗晴夫,高木千恵共編、くろしお出版、2019年）
『明解方言学辞典』（編、三省堂、2019年）
『フィールドと文献からみる日琉諸語の系統と歴史』（林由華,衣畑智秀共編、開拓社、2021年）
『日本語の格表現』（竹内史郎,下地理則共編、くろしお出版、2022年）
特に『明解方言学辞典』は、方言学分野における標準的な辞典として広く利用されており、木部氏の編纂者としての手腕を示す一冊と言えます。
木部暢子氏は、教育・研究・学術行政の三方面から、日本の方言研究と日本語学の発展に多大な貢献を果たしてきました。その研究は方言の個別具体的な記述にとどまらず、日本語全体の歴史や構造を理解する上でも重要な示唆を与えています。人間文化研究機構長として、人文科学分野の未来を切り拓くリーダーシップも発揮しており、今後の活動にも期待が寄せられています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。