木野工

木野工（きの たくみ）

木野工（1920年6月15日 - 2008年8月3日）は、昭和期に活躍した日本の小説家です。北海道旭川市に生まれ、激動の時代を生き、社会の変化を鋭く見つめながら、数々の文学作品を世に送り出しました。

生涯

1920年、木野工は旭川市で生を受けました。旭川中学校（現在の北海道旭川東高等学校）を経て北海道帝国大学工学部を卒業。1943年には海軍予備学生として横須賀海兵団に入団し、占守島への派遣や内地での勤務を経験し、終戦を迎えます。戦後は北海日日新聞の創刊に参加し、新聞合併後は北海タイムスの記者として文化部長や論説委員を歴任しました。

記者としての活動と並行して、1949年からは旭川の文芸同人誌「冬濤」に参加し、創作活動を開始。1952年からは同誌の編集責任者も務め、地域の文学振興に貢献しました。また、旭川市の郷土史研究にも熱心に取り組み、『旭川今昔ばなし』などの著作を著し、地域の歴史や文化を後世に伝える活動も行いました。

文学作品

木野工は、数々の文学賞候補に選出されています。

1953年：「粧（よそお）はれた心」が第28回芥川賞最終候補作
1956年：「煙虫（えんちゅう）」が第36回芥川賞最終候補作
1960年：「紙の裏」が第44回芥川賞最終候補作、「凍（しばれ）」が第46回芥川賞最終候補作
1962年：「怪談」が第47回直木賞最終候補作
1971年：「襤褸（らんる）」で第5回北海道新聞文学賞を受賞。第60回直木賞最終候補作

これらの作品群は、厳しい自然や社会の中で生きる人々の姿を、力強い筆致で描き出していることで知られています。

主な著作

『凍雪』 緑地社,1958
『グラン・プリ スピードに賭ける男たち』 荒地出版社,1967
『樹と雪と甲虫と』 光風社書房,1972
『襤褸』 新潮社,1972
『ドキュメント 苫小牧港』 講談社,1973
『旭川中島遊廓』 光風社書房,1976
『旭川今昔ばなし』 総北海出版,1985
『旭川今昔ばなし（続）』 総北海出版,1985
『東京風信』 南風社,1994

評価

木野工は、北海道の風土に根ざした作品を数多く発表し、地域の文学界に大きな足跡を残しました。その作品は、人間の内面を深く掘り下げ、社会の矛盾を鋭く批判する視点を持つことで、多くの読者に共感と感動を与えました。没後も、その作品は読み継がれ、北海道文学の重要な担い手として高く評価されています。

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