木馬道

木馬道とは

木馬道（きんばみち、きんまみち、きうまみち）は、かつて日本の林業において、木材を搬出するために用いられていた道のことです。1960年代以前の日本では、山間部の道路網が未発達だったため、伐採された木材を山奥から運び出すには、牛や馬の力を借りるか、人力で木橇に乗せて運ぶしかありませんでした。この木材輸送に使われたのが木馬であり、その木馬が通るために作られた作業道が木馬道です。

木馬道は、単なるけもの道よりも幅が広く、比較的緩やかな傾斜で作られています。木橇の抵抗を減らすために、路面には進行方向と直角になるように丸太が敷き詰められていました。この丸太は盤木と呼ばれ、木橇が滑りやすくするための工夫でした。

木馬道の変遷

工業化が進むにつれて、木材の搬出量が増加したため、木馬道の一部は森林鉄道へと発展しました。しかし、1954年から1964年までの10年間で、木馬道の総延長は3分の1にまで減少しました。1960年代以降、トラックの性能が向上し、林道網が整備されると、木馬道は森林鉄道とともに姿を消していきました。

単軌木馬

従来の木馬による木材搬出は、非常に重労働であり、危険な作業でした。木馬は「技術の習得に多年の体験を要する特殊技術であって（中略）林業労働中最高の重労働であり（中略）その上災害率の最も高い非常に危険な作業であるから近代林業の作業の中にこの種の運材法が残存している自体がそもそも不思議」と評されていました。この問題を解決するために考案されたのが、単軌木馬です。

単軌木馬は、1933年に熊本営林局菊地営林署で開発されました。木馬道の中央に木製のレールを敷設し、木馬には木製のブロックを取り付けて、レールを挟むようにして木馬の進行方向を誘導する仕組みです。制動は、鉄製の鞍型の制動子を木製のレールに押し付けることで行い、滑車とロープを使って操作しました。従来の木馬では、木馬夫が木馬の前方や丸太の上で制動していましたが、単軌木馬では木馬の後方で制動できるため、万が一の事故の際の危険性が軽減されました。

また、単軌木馬は、木馬道の幅を狭くすることができ、制動操作も簡単になりました。制動子の改良によって、より急な斜面や重量物の運搬も可能になりました。木製のレールは損傷が激しく、曲線部での使用が困難だったため、鉄製のレールへと改良されることもありました。単軌木馬による最長距離の運搬は、5000～6000mにも及びました。

木馬道の終焉

トラックの普及と林道網の整備によって、木馬道は歴史の中に姿を消しました。しかし、その歴史は、日本の林業の発展を語る上で欠かすことのできない重要な要素です。

参考文献

加藤誠平『伐木運材経営法』朝倉書店、1952年

関連項目

木曽馬
産業遺産

外部リンク

現役の木馬道（きんまみち）＠鳥取
『国有林 下巻』 普通木馬写真（国立国会図書館デジタルコレクション）
『国有林. 下巻』単軌木馬写真

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